そんなことしたら、パパが悲しむもん
『僕は猫より美智果が大事だ。美智果を守る為なら、猫を見殺しにだってする』
『パッと見の印象だけで判断して善悪を決めてしまうのは危険だ』
そんな風に言われて胸が苦しくなってる私に、パパはまだ言ってくる。
「美智果は、こんな風に弱い相手を痛めつけたいと思う?」
そう訊かれて、私は思いっ切り頭をぶんぶん横に振ってた。髪の毛が顔にバシバシ当たる。
自分より弱い相手ってことは、パパは、猫さんやちっちゃい子をそんな風にしたいのかって訊いてきたんだって分かった。何か悪いことをした猫さんだからって、ちっちゃい子だからって痛めつけたいとか思わない。
だって、自分より弱いんだよ? 自分は負けないんだよ? そんな相手を痛めつけてドヤ顔とか、私したくない。悪いことしたのは許せないけど、自分より弱い相手ボコって正義面って違うと思う。
パパは、そういうこと訊きたいんだろうな。
もし、私がハムスター飼ってて、それを猫さんに殺されちゃったりしたらきっと仕返ししたいと思っちゃうだろうな。思っちゃっても、私は猫さんに仕返しとかしたくない。
だってさ、相手が猫さんじゃなくて大きな犬とかだったら、私、仕返しできないもん。
自分より弱いのが分かってる猫さんには仕返しするのに、自分より強い犬には仕返ししないってズルくない? それって、自分より弱い相手だったらイキがれるだけだって気がするんだ。
でも、猫さんとか犬とかの飼い主に責任取ってもらうとかだったら、ちゃんと弁護士さんとか雇ってもらって訴えたりとかだったら、できるんじゃないかな。パパが言ってたよ。
「法律っていうのは、そのためにある」
って。力が強いとかっていうのとか関係なく、「責任取ってください」って言えるようにするためだって。今はまだ完璧じゃなくて<権力>っていう力が強い人とか相手だと難しいらしいけど、それでも、普通に喧嘩が強いとか弱いとかあんまり関係なくなるって。そのためにあるんだって。
パパは、いつだって大事なことを私に教えようとしてくれる。
スーパーヒーローじゃないけど、スーパーヒーローじゃなくたっていいんだって教えようとしてくれる。
もし、アニメの中の猫さんをイジメてた子たちも、お父さんやお母さんにそういう風に言ってもらえてたら、あんなことしなかったんじゃないかな。もしペットのハムスターをあの猫さんに殺されてたとかだったとしても、あんな仕返しの仕方しなかったんじゃないかな。
私は、あの子たちみたいなことしない。そんなことしたら、パパが悲しむもん。
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