怒らないって約束してくれる…?
「あのね、パパ。今から話すこと聞いても怒らないって約束してくれる…?」
「う~ん。怒るかどうかは内容次第かなあ」
ある日学校から帰った私が訊くと、パパが仕事しながらそう言った。だから、
「え~? じゃあ、話すのやめようかな…」
って。するとパパは振り返って、今度は私の顔を見ながら言ったんだ。
「なんだ? 何かやらかしちゃったのか? だったら正直に話した方がまだマシだと思うよ。もし後から、先生とかからバレたらお父さんも怒らない訳にはいかなくなるかもしれないし」
だから私は、
「違うの、そういうのじゃないの」
って首を振った。
「違うんだ? じゃあなんだろ。まあでもそれが何であれ、お父さんに話したら怒られるような良くないことだって美智果が自分で分かってて、それで自分で改めていくんなら、別に話さなくてもいいよ」
「う~……」
この時、私が言いたかったのは、マリーが言い出した、
『よっしーとみっちゃんと私の三人で一緒に家出して、遠くまで行ってみない?』
っていう話のことだった。
私は別に家出なんてするつもりないけど、マリーがもし本気だったらパパに言ったら止めてもらえるかなって思ったんだ。
だけど、この前の猫さんの話でもそうだったけど、パパは私のことはすごく大事にしてくれるけど、私を守るためだったら猫さんどころかよっしーやマリーだって見捨てるだろうなっていうのは分かるんだよね。
パパがよっしーやマリーに優しくしてくれるのは、それが私のためになるからって考えてるのも分かってる。よっしーやマリーが泣いたりしたら私も悲しいからパパは優しくしてくれるんだ。
でも、私を家出に誘うとか、そんなことするんだったらきっとパパは、マリーのことは見捨てる気がする。
『美智果に危ない事させようとする人には任せられない』
とか言ってさ。
マリーが家出してうちに来るのは別にいいって言ってくれてるよ。うちに来て、それで気が済んだら家に帰るとかだったらいいってパパは思ってくれてる。でも私も連れて遠くに行こうなんてのは、絶対に認めてくれないって思うんだ。
いくら私が泣いてお願いしてもさ。
パパは、私の言うことなら何でもハイハイって聞いてくれる訳じゃない。聞いて大丈夫なことは聞いてくれるけど、そうじゃないことは「ダメだ」って言うんだ。だからきっと、マリーの言ってることは聞いてもらえない。
正直に話したってパパは怒ったりしない気もする。でも、さっきのパパの言い方で結果が分かっちゃったかも。結果が分かってることを訊きたいって気分にはなれないかな。
それで結局、今回の話は<ナイショ>ってことになっちゃったんだよね。
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