パパ。ママのことだいじにしようね
パパと一緒にお墓の掃除をした後、お墓に水をかけながら私は言ってた。
「ママ、そっちでも楽しくやってますか?」
天国っていうのが本当にあるとは私だって思ってない。でも前にも言ったけど、『ママが天国で楽しくやってる』って思えばまだホッとするんだ。それだけの話。
私は覚えてないんだけど、パパが言ってた。
火葬の後、ママの骨が入った小さな箱を見た私が、
「パパ。ママのことだいじにしようね」
って言ったんだって。自分でも覚えてないからどうしてそんな風に言ったのかも分からない。だけど正直な気持ちだったんだろうなって思う。
それに、私は今でもママのことを大事にしてる。パパも大事にしてくれてる。立派な仏壇作ってお祭りしてるってわけじゃないけど、ママのことは毎日ちゃんと思い出してる。たぶん、それのおかげで記憶が薄れてても覚えてられるっていうのもあるのかな。
でもね、ママの姿って言ってパッと思い出せるのは、うちにいる人形のママか、このお墓って感じになってきてるのもホントなんだ。
だからパパに訊いたことがある。
「ねえパパ? ママのホントの顔がはっきり思い出せないのって、私がママのこと大事に思ってないからなのかな…?」
って……
だけどパパは言ってくれたよ。
「毎日顔を合わせてるわけじゃないから、姿がぼんやりしてくるのは別に普通のことだと思う。だけど美智果はママのことを忘れた訳じゃないだろ? 今でも好きだろ? だったらそれでいいと思うよ」
ってさ。
そうだよ。私は今でもママが好き。それは変わらない。
でもさ、思うんだ。私がこうしてママのことを好きでい続けられるのって、パパのおかげなんじゃないかなって。
パパがママのことを大好きでたくさん話してくれるから、私も好きでいられるんじゃないかなって。
ママが亡くなったことは今でも悲しい。イヤになる。泣きたい気持ちになる。だけど私とパパがこうしてママのことを覚えてれば、ママが生きてたんだっていうこともちゃんと残るんだっていうのも思う。
私とパパがいるからママがいたことも残るんだろうな。
だからさ、ママ。私、がんばるよ。イヤなこととか辛いこととかあってもがんばるよ。だってママが私を生んでくれたんだもん。その私がへこたれちゃったらママか悲しむもん。
それに、ママのことを大好きなパパが私のことも大好きでいてくれるもん。それってさ、すごいことだよね。私のことを好きでいてくれる人が傍にいてくれるのってすごいことだよね。しかもさ、私もその人のこと大好きなんだ。
ホントにホントにすごいことだって思うんだ。
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