比べ物になんないじゃん

「ぐはっ! 花丸もやるじゃん! これはあれか? 活劇と見比べろってことか!?」


塾から帰ってきて宿題も終わらせてノートPC見てたら、動画サイトで花丸の配信も始まってた。活劇の見逃し配信と同時だ。これはもう見比べるしかない!


さっそくパパの予備PCを借りて花丸を視聴する。当然、私のノートPCではゲームをしながらだ。


「はえ~、花丸も出だしは、どシリアスっぽく始まったんだったな。そうだったそうだった」


以前、花丸が放送してた時の録画も残してあるけど、ついつい新しいアニメを見るのに忙しくて振り返れなくて、だけどこうして配信が始まると見ちゃうんだよね~。それにしても、


「活劇はカッコいいけど、花丸のほんわかぐにゃぐにゃな感じも好きなんだよな~。何だかうちみたいで」


ってしみじみ思っちゃった。


そう。うちは、まさに花丸本丸みたいな雰囲気なんだ。ほんわかしてて和んでて、あったかい。外に出たらシリアスなこともあるけど、本丸、じゃなくて家に帰ればほっこりできる。


私が学校にいってられるのは、少しくらい嫌なことがあったりしても家でパパに癒してもらえるからなんだ。リンちゃんにきついこと言われてもネチネチ言われても、家に帰ってパパとお話ししてお膝してお風呂に入って一緒に寝たら大丈夫なんだ。


それを思うと、リンちゃんって、家でこんな風にしてもらえてないんだろうなって思うんだ。だからあんなにいつもイライラしてて態度がきついんだ。そんな風に思ったらさ、なんだか可哀想にも思えるんだよ。パパとママにこんな風にしてもらえたらあんなにイライラしないかもしれないのになってさ。


パパもいつもそう言ってくれる。


だから、家でほんわかぐにゃぐにゃできないなんて可哀想って思える。


なんて、リンちゃん本人に言ったらきっとキレられるだろうなあ。言わないけど。


そういうことを妬んでる人に言うのは、ケンカ売ってるのと一緒だってパパも言ってた。自分にないものを指摘されるのが一番ムキになりやすいって。そんなことで相手を怒らせても何の得にもならないって。


だからさ、言わないの。リンちゃんのことをやっつけようとかも思わない。可哀想だしさ。


ホントに、どうしてみんなパパみたいにできないのかな。そうしてくれたら他人にイジワルしたりイジメたりなんてのも減ると思うんだ。


子供を甘やかしたらストレス耐性の低い人間になるとかいう人もいるらしいけど、じゃあ私なんてもうストレスかけちゃダメじゃん。


だって、ママが亡くなったんだよ? パパもママもそろってる子とかのストレスなんかと比べ物になんないじゃん。


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