私のママはママだけだも~ん
ママが亡くなって六年。でも、パパは再婚とかする気配もない。
まあ正直、イケメンじゃないしそんなにお金持ちでもないからモテなくて当然だと思うけど、一番の理由は、パパもママのことが今でも好きだからだと思う。
私とパパは、今でもママのことを話し合う。ママがどんな人だったとか、どんなことをしたとか、言ったとか。
パパが教えてくれるママは、とっても変わった人だった。でも、私がうっすらと覚えてる、病院のベッドの上のママじゃないママの姿とちゃんと重なるんだ。
パパはイケメンじゃないけど、ママは女らしい女の人じゃなかった。
「ゲハハ!」って感じで下品に笑って、家では完全にマッパで、ゲームをしながらバリィッ!と大きなおならをブッパしては「痛ぁっ!」とか声を上げる、本当に女らしさの欠片もない人だったって。
だけど、パパは今でもママが好き。
パパは、ママが女らしいから好きになったんじゃないって。ママっていう人を好きになったんだって。好きになった相手がたまたまママだったんだって。
だからパパにとってママ以外の女の人は、ママの代わりにならない。だって、その人はママじゃないから。
ママ以外の女の人とだって付き合うだけならできるってパパは言ってた。でも、ずっと一緒にいたいって思える人はママだけだったって。
ちょっと前、パパが私に訊いたことがある。
「美智果、新しいお母さんとか要る?」
って。
でも私はすぐに言ったんだ。
「え~? 要らな~い。だって私のママはママだけだも~ん。それにパパがいるから平気だよ」
ってさ。
そうだよ。パパがママしかいないって思うのと一緒で、私にとってはママはママしかいないんだよ。他の女の人はママじゃない。ママは、壊れたからって買い換えたらいい家電製品とかじゃない。そんなのママだって私は思わない。
『要らな~い』って私が言った時、パパは嬉しそうな顔をしてた。私がママのことをちゃんと好きだっていうのが分かったからだって。パパがちゃんと、私の好きなママのことを覚えていられてることが嬉しいんだって。
亡くなった人のことをいつまでも引きずってるなとか言う人もいるかもだけど、私とパパはそういうのじゃないもん。だって、ママがいたのは本当のことなんだよ? 死んじゃったからっていなかったことにはならないよ。
ママはなくなった。だけどいなかった訳じゃない。
ママは今でもちゃんといる。ママがいたから私がいるんだもん。パパもそう思ってるもん。
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