コネクター・コレクト

三田 京

第1話 コネクト

遂に、遂に見つけた。

あなたが私の………。





始まりはいつも突然に

なんてことを昔聞いたことがある。

それはそうだこれから自分に何が起こるかなんて誰にも分からない。分かってしまえばそれは未来予知だ。そんな特殊能力を持ってる人なんて見たことも聞いたことも無い。

でも今回は違った。始まりは突然なんかじゃない何か予兆があるはずだ。その予兆が突然であれば結局は同じことなのかもしれないけど。

それでも僕はその時これから何が起こるかを分かってしまった。

こんな御託なんて並べてる余裕もないはずだけどなぜか無駄なことを考えてしまう。

人は死を間際にすると脳が活性するなんて話を聞いたことあるけどそれほんとみたいね。

走馬灯ってそれが極まってほんの一瞬で今までの人生を思い出すことが可能になるらしい。いやー、勉強になったね。うんうん。

「ラノ!何ドヤ顔で頷いてんの?現状わかってる!?馬鹿なの?」

その言葉で僕は思考の渦から現実へと戻される。

「現状?レイが寝てる馬鹿でかいミミズにちょっかいかけて絶賛襲われてる最中でしょ!」

どうして彼女は自分の事を棚に上げ僕を責めてくるのだろう。

昔からそうだった。いつも好き放題に行動して色々な人、ほぼ僕だけど。迷惑かけて、それでもまた同じことを繰り返す。

しかもものすごく楽しそうに。

まあ、そこが可愛らしいというか憎めないというか嫌いになれない。幼なじみという関係は不思議なものだね。

「それが分かってるならなんとかするわよ!」

「そうは言っても今日は町への買い出しだけの予定だったから装備なんて整ってないよ」

「もう、これだからラノは…。備えあればなんとかって言うでしょ」

「憂いなしね。まあ、その辺はなんにも言えないけど」

「じゃあ私がどでかいのやるから囮よろしく!」

「えー、嫌だなー」

「いいからはやく!準備する一瞬だから」

「はあ、了解。じゃあ行くよ」

「うん」

「「『接続コネクト!』」」

僕は左胸にレイは首に『コネクター』を挿す。

すると体の奥底から不思議な力が湧いてきた。

「ラノ、私は炎で行くから当たらないように気をつけてね。でもちゃんと引きつけるのよ」

「はいはい、分かりました。やればいいんでしょやれば」

こうなることが分かっていたから大ミミズなんかに関わりたくなかったんだ。

愚痴をこぼしつつ僕は大ミミズの前に飛び出した。

「一応看破しとくよ」

「おっけ」

「『看破の眼』」

そういいながら僕は懐に入れた水晶を掲げた。

「うん、情報通り。変異体でもないから炎が弱点だ。レイ!準備は良い?」

「うん、いつでも大丈夫!」

彼女を見ると赤いオーラを纏った二丁の銃を手に大ミミズの頭に狙いを定めていた。

「よし、今だレイ!」

「うん!炎銃の弾丸フレイムバレット!」

レイの銃から二筋の赤光が放たれる。

それは吸い込まれるように大ミミズの頭に当たると炎が弾けるように辺りへと広がった。

「うわ、危な!」

「もう、気をつけてって言ったでしょ」

「なんかその技威力上がってない?」

「ふふん、私は常に成長していく女なのよ」

年齢にしては慎ましやかな胸を張りこれでもかというドヤ顔をかますレイ。

とはいえ彼女の言うことは一理ある。同じ頃にコネクターを手にしたけど成長の差はとても大きく僕なんかじゃ手も足も出ない。

まあ、そんなに気にしてはないけどね。

「ま、そんなことより大ミミズのドロップを確認しよう!」



この世界では魔物と呼ばれるモンスターが存在する。普通の動物や獣と違い魔物には核と呼ばれる心臓のようなものが身体の中に存在している。その核を破壊するとどういう訳かコネクターが出てくるのだ。

コネクターとは先程ハルやレイが使ったようなもののことで人と繋げることでそのコネクターに内包する力を扱えるようになるものだ。その実態はまだまだ解明がされてないが人間が生活していくのに最早必須となっている。


人間は生まれた時から身体のどこかに小さな穴がある。それはもちろんコネクターを接続するための穴、所謂『ポート』と呼ばれる器官である。人はコネクトする前提で生まれてきた種族であり、魔物はコネクターを生み出すのに重要な存在。この因果関係に研究者は頭を悩ませそして嬉々としてこの謎に立ち向かっていくのだ。



「どんなのが出るかな?」

わくわくしながら僕は大ミミズに近寄っていく。

「ラノ!待って!」

「ん?なにレイ」

そう聞き返し振り返ろうとしたところで違和感。

大ミミズが起き上がり今にも襲いかかろうとしている

「うわ!ちょっ!たんま!」

「ラノこっち!」

僕は一目散にレイの元へと走る。

「全く!あんたは相変わらずのコネクターオタクね!ちゃんと倒しきったかどうかの確認くらいしなさい」

「く、何も言い返せない」

確かにちょっと確認不足だったなぁ。

でもコネクターが目の前にあるんだ。しょうがないよね!僕の師匠だってきっと同じことを言うさ。

「とりあえずもう1回ぶっぱなすわよ。ラノ」

「それはまた囮になれってこと?」

「あら、やっぱり私たちは幼なじみね。以心伝心してる」

ちくしょう、何も言えねえ!

「あ、その必要はないみたいだよ」

「どうしてよ」

「ほら上」

「あら、ほんとね残念」

残念とは一体。

そんなことよりも僕らの上にあったものとは…

「おーい!ラノ、レイ!下がってろー」

「了解ですニゲラさん」

「やっちゃえー!」

上空からの砲撃の雨。ただでさえ瀕死だった大ミミズは木っ端微塵に吹き飛んだ。

「あー、やりすぎだよコネクターが…。」

「もういいでしょ命があっただけ」

「あーあ」

「もう、うじうじして。早く私たちの家に帰るわよ。飛行ギルドグロウスピリットに!」

僕たちの家は空を駆る飛行船。そしてコレクター達が集まるコレクターギルドでもあるのだ。

「分かったよ行こう」



ここはコネクターを愛し、集め、高める者たちが集まる場所。

時に飲み、時に騒ぎ喧嘩し、遊びふざける。そして常に仲間を思いやり仲間の為に拳を振るう。

コネクターギルドグロウスピリット

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