ラブコメ(練習)
みももも
口巧者な彼と、無口な彼女
「お前さ……」
「お前今日、いろんな人に話しかけられたよな……」
「いつもはお前、口を開いてもくれないのに。今日は色々は人に話し返してたよな」
「俺に対しては無口なのに周りに対して雄弁なのは、俺のことが嫌いだからなのか?」
「なんてな。別に本気で思っているわけじゃないさ。もし嫌いなら、俺にいつまでも付き合ってくれないはずだし。こう言ってはなんだけど、俺はお前のことを信じてるから。周りに流されることはないし誰かに媚びることもない。嫌なことはやらないし、好きなことはやり続ける。そんなお前に俺は尊敬しているし、だからこそ俺はお前がそばにいることを許容できる。だけどさ、今日、まわりと積極的にコミュニケーションを取れるお前を見て、俺はそんなお前もいいと思ったんだ。可愛いと、思ったんだ!」
「もしかしたら、俺はいつも話しすぎてしまうのかもしれない。そのせいでお前が辛い思いをしているのかもしれない。だけど俺は、お前がいつも喋らないから。俺が喋らないといけない気分になってしまうから、だから仕方なく……これは違う、言い訳だな。俺は確かにお前と話しているのが楽しい。いや、お前に話しかけているのが楽しい。空回りしている自覚はあるけれど、ふとした拍子に笑ってくれるお前の笑顔が見たくて、だからひたすら喋り続けているんだ。だけどさ……」
「だけどさ、今日のお前を見て、ふと思っちまったんだ。もしお前が俺に対しても口を開いてくれたらって。そしたら俺は、お前に対して口だけじゃなくて心まで開けるんじゃないかって。キモいか? わかってる、自覚はあるさ。だけどこれは、口先だけじゃなくて、本当に心から思っていることでも、あるんだ」
「別に無理しろって言ってるわけじゃない。むしろ無理しないでくれって言いたい。もしお前が喋りたくないなら今のままでもいいし、俺に言いたいことがあるけど黙ってるってんなら、話してほしいとも、思う。俺はこうやって返事もしないお前に話しかけるのに慣れてるけど、今日のお前を見て活発なコミュニケーションをとるお前も可愛いと思った。つまり要するに……だ。お前はお前の好きなように生きてくれ。俺はお前がそう望むのなら……」
「『別れる』なんて、馬鹿なことは言わないで!」
「そうか。そうか、ありがとう」
「うん。ちょっとずつだけど……頑張る」
ラブコメ(練習) みももも @mimomomo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます