駄女神様はエロにうるさい
虹音 ゆいが
ようこそ、ギャルゲーの世界へ ~だが僕はノーマルエンドへ行く~
どうあがいても、ハーレム
超絶可愛い女神(つまり私)からのルール説明
「以上で基本的な説明を終わります!」
私は定型文で話を締めて、彼の反応を窺った。
ここは神界。細かい説明をするとキリがないので割愛。つまるところ、神様的な雰囲気の漂う世界。
で、その神様が私。名前はまだない……いや、もうない、かな。みんなしてバカの一つ覚えみたいに『女神』って呼ぶもんだから、もうそれでいいや、って感じでホントの名前は投げ捨てちゃいました。
「……一応、あなたの話を理解はしたつもりです。が、色々と僕の常識を超えている話だったので、質問をしてもいいですか?」
私の前に立つ彼が言葉を選ぶように言います。
彼の名は
「はいはい、勿論ですよ~?」
「第一に、これは僕の夢の中。本当の僕はまだ寝ている。間違いないですか?」
厳密に言えば、彼の夢を神界に引きずり込んだんですけど、まぁ大体間違ってはいませんかね。
「はい、そうなります!」
「で、女神であるあなたが僕の夢に入ってきたのは、あなたの暇潰しを解消するため……なんですよね」
「ぬぐっ……ひ、暇潰しと言われるのは心外ですね。これは私の女神的好奇心を満たす為の高貴な遊びと」
「だからそれを暇潰し、と言うんだと思いますが」
淳史君は愛想が悪いです。女神さまを尊敬する心もありません。ぷんぷん。
「……ま、まぁいいです。暇潰し、という事にしておきましょう。他に何か聞きたい事は」
「ここからが一番重要です。その暇潰しとして僕が挑戦する、っていう……ギャルゲー、でしたか? それって何ですか?」
「えぇ……」
そこから? 健全な男子高校生なら、ギャルゲーの1つや2つはしてるものじゃないんですか?
人選、ミスったかも。とは言え、神界と夢を混ぜ合わせてしまった今、間違いでした~てへぺろ♪ をするわけにもいかないですね。
「よろしい、説明しましょう!」
~5分後~
「なるほど。ゲーム内で疑似恋愛を楽しむモノで、恋愛の対象となる女性が複数人存在する、と。彼女達の好感度をプレイヤーの行動によって操作し、いかにその愛情を勝ち取るかを考慮する必要がある、ですか」
……私、そんな小難しい説明したっけ? 進学校で勉強漬けの毎日を送っているようなので、色々と脳みその働き方が特殊なのだろうか。
って、なんで女神である私が、圧倒的思春期をひた走っているはずの男子高校生にギャルゲーの説明をせにゃならんのか。絶対に間違ってるよ。
「ギャルゲーの趣旨は理解しました。要は、僕の姉がよくやっている乙女ゲーの性別が逆転したバージョン、という事ですね」
「ああ、乙女ゲーは知ってるんだ……」
ていうか、弟の前で乙女ゲーするってどうなんだ、お姉さん。
「ま、まぁこれでギャルゲーが何なのかは分かって貰えたと思うんだけど」
「そうですね。で、僕はあなたの用意したギャルゲーの世界に主人公として入り込み、女性達の好感度を操作する、と」
「その好感度を操作、って表現止めてくれないかなぁ!?」
けどまぁ、その通りだ。
今回、女神である私が掲げたテーマはこちら!
『恋愛に疎い男子高校生なんてどうせむっつりスケベばかりなんだから、ギャルゲーの世界に放り込んでやれば色々暴走するっしょ!』
……はいそこ、女神ってそんな暇なの? とか言わない。今夜夢に出るよ? 神界付きで。
「どうして僕が選ばれた……なんて質問をしたところで時間の無駄でしょうね。あなたを見るに、何となく想像は付きますから」
「ほう、ならば言ってみたまえよ」
「何となく」
「その通り!」
「ホントに時間の無駄でしたね」
はぁ、と特大のため息を吐いた淳史君は、メガネを指で押し上げます。
「では、質問は終わりにして、僕の答えをお伝えします。僕はあなたのギャルゲーに参加するつもりはありません」
「……へ?」
「僕は恋愛に興味はありません。今は週末の模試に向けた勉強で精いっぱいですし、尚更あなたの暇潰しに付き合う余裕はありません」
……おやおや? 私のテーマが速攻で否定されましたよ?
いやいや、これはアレですよ。最初はとりあえず断る、っていう日本人特有のアレですよ、うん。
「いやいや、そんな事言わずに。君の好みの女の子を登場させてあげ」
「だから、いいです。好み云々の話をしているんじゃないですから」
…………すっごくマジトーンで言われました。えぇ……? 男子高校生ってむっつりじゃないの?
このままじゃ色々マズい。どんな結果になるにせよ、まずは実験が始まってくれなきゃ話にならない。
「……よし、こうしましょう!」
名案を考え付きました。さっすが私!
「ギャルゲーと言うのは、好感度をたくさん上げた女の子との個別エンドと言うものがあるんです!」
「個別、エンド……?」
「はい! 女の子全員の好感度を上げたらハーレムエンドになったり、逆にどの女の子の好感度も低いままだったらノーマルエンドになったりしますけど、基本的には個別エンドに行き着きますね」
「ふむ……で、それが何なんですか?」
お、ちょっと食い付いてきました。このまま勢いで押し切りましょう!
「私は女神なので、すっごく色んな力を使えます。それを使って、あなたがこの夢の中で個別エンドに辿り着けた女の子を現実世界に登場させてあげます!」
「……それはつまり、ゲームの中の女性を本物にする、という事ですか?」
「その通り! あなたと個別エンドを築いた後ですから、もうラブラブなはずです。あなたは好みの女の子を簡単に彼女に出来るわけで」
「却下です」
……あら?
「あなたの話から察するに、ギャルゲーに登場する女性達は主人公に好意を寄せやすいのではないですか?」
「ま、まぁそうかもしれませんね」
「無条件で好かれやすい環境、という事ですね。僕は女性に好意を寄せてもらうのは嬉しい事だと思いますが、男にとって有利過ぎる状況で得た好感度に何の意味があるのですか。女性に対しても失礼でしょう」
少し怒った様に。うわ、この子すっごい真面目です。
ていうか、ギャルゲー全否定ですね、これ。ゲームの中でくらいはモテモテになりたい、みたいな願望を叶えるゲームでしょうに。
しかし、どうしましょうか……これだけ豪華なクリア報酬を用意しても全然喜ばないどころか、何故か説教される始末。ホント、人選ミスったかな……、
「……? 女神さん、なんか辺りが光りだしましたけど」
っ、淳史君の言う通り、元々薄暗い空間だった神界が光を帯び始めました。
ここは淳史君の夢と混ざり合った場所。それが光りだしたという事は、淳史君が目を覚ましかけてる、という事です。
まさか説明だけでこんなに手間取るなんて思ってなかったしなぁ……って呑気にぼやいてる場合じゃないですね!
「淳史君、あなたは今から目を覚まします! そこはもう、私の作ったギャルゲーの世界です!」
「は!? だからお断りだって」
「もぉ遅いんですぅ! ルールはさっき言った通り! 女の子達と楽しく過ごして好感度を上げ、個別エンドに進んだ暁にはその子を現実世界にプレゼント! このルールは絶対です、絶対!」
やけくそです。一番は双方の合意を得た上でルールを構築する事ですけど、背に腹は代えられないのです。
「期限は1日! 女の子は全部で3人! 個別エンドの条件は好感度80! その条件を満たした女の子の中で一番好感度が高い子をプレゼント! 3人全員の好感度が80を超えたらハーレムエンド! 逆ならノーマルエンド! はい、行ってらっしゃい!」
「ちょっ、待っ……」
淳史君は抵抗する間もなく、夢の外へと弾き出されましたとさ。
……しかし、マズいですねぇ。
淳史君のあの様子からして、ハーレムは勿論、個別エンドも無視してノーマルエンドを目指そうとするんじゃないかなぁ……目指すだろうなぁ。
一応、淳史君の好みを調べてそれに沿った子を
けど、ノーマルエンドはつまんないしなぁ……女の子の好感度はめちゃくちゃ上がりやすく設定したはずだけど、淳史君は極力好感度が上がらないように振舞うかもしれないしなぁ……。
……よし、ちょっとだけルール変えとこ。ちょっとだけ、ね。くふふふっ♪
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