俺の周りの女【ヒロイン】が(ほぼ)全員ワケありなんだが
プル・メープル
プロローグ
今を生きる若者は、『平穏な日々』がいかに大切なのかを真に理解していない。
普通であることがどれだけ尊いことか、それを知らない奴らは俺からすれば愚かでしかない。
どうして普通であることが幸せだと思えないのか。
どうして普通であることをダメなように言うのか。
俺には理解できなかった。
そんな彼らは俺を見て、『醜い』と言った。
嗤い、同情し、そして見下した。
ただひとりとして「自分がそうなったら……」なんて考えた者はいないだろう。
俺を引き取ってくれた両親以外には。
義父さんと義母さんには既に娘がいて、決して裕福とは言えない家庭でありながらも、俺を孤児院の環境から救ってくれた。
2人には感謝してもしきれない。
いつかはこの恩を返せるような、立派な大人になるぞ!
だなんてたいそう立派なことが言えるようになればいいなと思いつつも、俺、高校二年生の
いわゆるぼっち飯ってやつだな。
他の奴らは友達とやらと一緒に話しながら食べたりしているが、俺はそんなものに混ざるつもりは無い。
友情だとか愛情だとか、そういう目に見えないものは信じられない性格なのだ。過去の境遇故に。
最低限のコミュニケーションさえとることが出来れば、困ることなんて何一つない。
むしろ、邪魔でしかないだろう。
そのほとんどがどうせ数年後には切れる縁だ。
そんなものを作っている暇があるなら、俺は他のことにその時間を使う。
友達なんてものを信じるのは、バカのすることだ。
少なくとも俺はそう思っている。
一度、全世界の人間に、『真に大事なものは何か』と言う質問をしてみたい。
恐らくほとんどの奴がアホ面引っさげて『友達』だとか『大事な人』だとか、そんなありきたりな答えを使いまわすのだろう。
俺はそいつらに言う。
「そんなわけないだろ、アホ」と。
もちろん、俺を救ってくれた父さんと母さんは信用している。
あの二人には真に優しい心というものがあるから。
だが、渡る世間は鬼ばかりとはよく言ったもので、いい人ばかりではないのだ。
それは紛れもない事実。
人間というのは元々利己的な生物で、友達を作るのも、誰かを助けるのも、自分に利益があるからなのだ。
形に残る利益でなくとも、「ありがとう」の一言を待つなんてことはよくある話だ。
無意識のうちに利益を求めてしまっているんだ。
そしてその利益の中でもトップと呼べるのが金と権力だ。
金が無いからという理由で実の両親に売られた俺には、それが痛いほど理解出来る。
金があれば、人生を楽しく過ごすために必要なものは全て手に入る。
友達だとか恋人だとか、そんな価値不定なものを信じるなんてのは、脳味噌の芯までゆとりに犯された人間のすることだ。
世間の暗い部分を歩いてきた俺には、そんなヤツらの考えには理解に苦しむ。
弁当を食べ終えた俺は、それを片付ける。
昼休みが終わるまでまだ15分ある。
俺は教室を見渡しながらため息をついた。
学校というのは平和ボケした奴らの集まる場所だ。
暴れ回る男子や、大声で笑う女子。迷惑でしかない。
そんなヤツらと同じ空気を吸っていると思うと、気分が悪くなってくる。
俺はそんな愚像共の中からひとつをピックアップして眺める。
机の端に腰掛け、2人の女子と団欒をしている彼女はクラスのマドンナと言われている
腰まで伸びる艶やかな黒髪やトップモデルや売れているアイドルレベル顔立ち、抜群のスタイルから、マドンナと言われるのには頷ける。
だが、俺はあいつが嫌いだ。
誰にでも優しく接する彼女に、どこか胡散臭さを感じてしまう。
人間、誰にでも優しいは普通に考えてありえないのだ。食べ物と同じように、人間関係にも好き嫌いは必ずある。
だが、彼女は『嫌い』を見せたことがないのだ。
そんな人間がいてたまるか。俺はこんなにもたくさんの人間を嫌っていると言うのに。
「え、そうなの?うわぁ、それ痛そぉー!」
咲ノ森 怜華のそんな声が聞こえてくる。
本当に、胡散臭い女だ。
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