従者会議
そのころ、キリーの町ではマリーが頭を抱えていた。
乾季が終わり雨季になり、大事なヴィーナス様の亡霊の館で、あちこちと雨漏りがしているのである。
マリーが預かっている館は、男で入れるのはミハエルとアポロとトールだけ。
ミハエルは老人、高い所の修理は危険で、後の二人はジャバ王国の高官である、とても頼める訳はない。
「どうしましょう、ヴィーナス様より預かっている大切な館なのに、困ったわ」
「しかもここはジャバ王国の離宮、ヴィーナス様やお姉様達の逢瀬の場所、困ったわ、あぁ、困った」
そこへニコルさんが所要でやってきた。
「どうしたの?」と聞いたので、マリーが雨漏りの件を話した。
ニコルが見に行くと、雨漏り後が点々とし、壁紙が剥がれ、本当の亡霊の家になってきたように見える。
「どうしましょう」と、二人で途方に暮れていた。
ニコルが、
「しかたがない、マリー、待っていてね、アポロを呼んでくる」
といって、異空間ドアを開けてでていった。
しばらくしてアポロが、「ニコル、私は忙しいのだが」とこぼしながら引っ張られてきた。
マリーから事情を聞いたアポロが見に行くと、渋い顔をして戻ってきた。
ニコルが「アポロ、何とかならないかしら」と聞くが、アポロは「うぅぅ」と唸るだけ。
「改築しかないが、ここは知っての通りの場所、だれかれ入れる訳には行かない」
「私は大工仕事など未経験、トールも壊すならできるが、修理なんて絶対無理だし……」
そこへサリーとダフネがやってきた。
「サリーお姉さま、良いところへ、どうしましょう、お姉さま、どうしましょう」
「マリー、そんなに慌ててどうしたの?」
マリーが一生けん命に説明しますが、慌てているマリーでは話が通じません。
アポロが説明を追加して事態を把握しました。
サリーも困った顔をしたところ、ダフネが「私に任せなさい」と云います。
「マリーの危機は見過ごせませんし、私の巫女様の危機、ひいては私たちと巫女様のベッドの危機です」
アポロが、
「ダフネさん、いくらなんでもそれは露骨過ぎますが?」といいますと、「事実は事実です」との返事が返ってきます。
アポロは肩を
「で、どうするのです?」
ダフネが、「私たちは魔法士ですよ、魔法で対処するのです」
「ちょうどよい機会です、小雪と私は魔法が使えますが、サリーとビクトリアとアテネとアナスタシアの四人は心もとないでしょう?」
「私と小雪で指導いたしますから、四人で直すのはどうですか?」
「これから、巫女様はなにかと忙しくなられます、私たちでも、少しぐらいはお役に立たなくてはなりません」
「私は皆を呼んできます、サリーさんはここで待っていてください」
「サリーお姉さま、ダフネ様がいってしまいました……」
「仕方ないわね、確かにダフネの案しかないわ。それに私もそうだけど、お嬢様のことになると人が変わりますし」
「お姉さまも幸せなのですね、ヴィーナス様に……」
「マリー、私たちはお嬢様のお側にいられて幸せです、お嬢様なしの生活は考えられません」
「でも貴女は貴女なりの幸せを掴んで欲しいの、マリー、だれかいい人はいないの?」
サリーさんとマリーさんが、取り留めない姉妹の話しになっていた頃、私はリリータウンで、アテネさんとアリスさんと三人でお茶をしていました。
二人とも私の差し上げた制服を着ています。
いつも思いますが、アテネさんはボーイッシュで男装が良く似合います。
アテネさんが、
「イシュタル様のこの服は本当に機能的ですね」と云っている時、ダフネさんが、
「アテネ、従者会議を開きますので来てください」と呼びにきました。
また従者会議ですか?
このごろよくこの名の会議を皆がします。
どうも私をハネにして、良からぬことを相談する会議の様ですが、今回はなんでしょう。
前回は私とのベッドの順番などを決めていました。
「ダフネさん、こんどは何ですか?」と聞きますと、
「巫女様は楽しみにお待ちください」と云います。
「アリス、巫女様の相手をしていてください」
「巫女様に何をしてもらってもいいですよ」
なんて云ってくれるのですよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます