分捕り合戦


 リリータウンでしばらく私は休養しています。

 キリーの町で休養してもよいのですが、やはり故郷の匂いがするこの町によくいます。


 アナスタシアさんが来た、次の日の昼でしたか、それは大変でした。

 まずサリーさんが時間ピッタリに来ます、サリーさん、お昼はどうしましたと聞きますと、そんなものは後です、との返事、気合いが入りまくっています。


 私の服を、それはそれはすごい勢いで物色しています、怖いぐらいです。

 サリーさん、手に二つほど持っていますが、どうやら候補を確保しながらの作戦のようです。


「こういうものは早い者勝ち、取ったもの勝ちです、そろそろ皆が来る頃です」

 サリーさんの動物的な感は、素晴らしく当たります。


 次にアリスさんが「ずるい」と云いながら参戦します。

 一歩遅れてダフネさんとアテネさんと小雪さんが来て、

「負けない」と云っていますが、何に勝負をしているのでしょう。


 ビクトリアさんが「やはりな」と云いながら来ました、なんで男物の古着に血走るのか理解できません、まだ私は女になりきっていないと実感しました。


 最後にアナスタシアさんも来ました、

「イシュタル様の服を着たいと思いまして」と上品に云いましたが、その後の行動は肉食獣ですね。

 私の周りはトラやライオンがうようよしているようです。


 私はアテネさんを呼びました、

「アテネさん、あなたにはこれをと思っていましたが、お気に召しませんか?」

と私は取り除けておいた、中学三年の時に着ていた詰襟の黒の学生服を差し出しました。


 アテネさんは目をキラキラさせて、突然今度はウルウルとしています。

「イシュタル様がお召しになった服を私が着れる、しかも選んでいただけるなんて」

「でもアテネさん、これは殿方の服、いいですか?」

と聞くと、勢いよく頷きました。


「イシュタル様、着て見てもいいですか?」

「ではこちらで、着替えを致しましょう」

と私たちは階下のDKへ移動して、私はアテネさんの着替えを手伝いました。


 アテネさんは恥じらいもなく、さっさと服を脱ぎます。

 あれ、アテネさん、ショーツだけじゃないですか、ブラはどうしましたブラは。


「アテネさん、貴女の年頃の女性ならば、そろそろブラも付けてください」

といいますと「めんどくさいし、そんなに大きくないし」と答えます。


 まぁたしかにAカップですかね、しかも一番小さいのでしょうか、しかしこれは自称、母親のダフネさんにきつく叱ってもらいましょう。

 ダフネさんだけでは拙いですね、アナスタシアさんにもお願いしましょうか。


 私はA65というサイズのブラを購入して「これをつけなさい」といいますと、渋々つけています。

 アテネさんが詰め襟を着ますと、やはり女性ですので、中学生程度の学生服がちょうどでした、少し服が長いですか?

 まあいいでしょう。


 アテネさんを連れて戻りますと、まだ分捕り合戦をやっています。

 ビクトリアさんがジーンズのズボンとジャケット。

 ダフネさんが半袖のポロシャツと半ズボン。

 小雪さんがカッターと背広上下。


 アナスタシアさんには驚きました、作務衣です。

 アリスさんは私の小学校の頃の制服です、半ズボンとブレザーが似合います。


 サリーさんはTシャツとパジャマ上下。

「サリーさん、それは寝る時に着るものですよ」といいますと、

「お嬢様がいつもベッドで着ていた服です、寂しくなったら着ようと思って……」

 

 サリーさん……


 アテネさんが、

「私もイシュタル様がいつも着ていた服だぞ」

「アテネさん、それは私が3年間毎日着ていたものです、それは礼服の代わりにもなるものです。本当によく似合いますよ」

 男装の美少女、私もときめきそうです。


 ビクトリアさんが、

「これはなんという服なのか?」と聞いてきます。


「それはジーンズといって、屋外で作業するために作られたものです」

「青いのは虫や蛇が、寄って来ない様にするための染料で染められた、帆布という非常に頑丈な布で作られています」

「屋外用の証拠に、そのズボンのお尻についているのは、マッチを摺ることもできるラベルですよ、30年以上は着続けられるはずです」

 そのほか色々説明させられました。


 ダフネさんが、

「巫女様、ありがとうございます、巫女様の物をいただき、身に余る光栄です」と堅苦しいこと。


「ダフネさん、それより着てみませんか、そして記念に皆で写真を撮りましょう」。

 皆さんの頭に?が立っています。


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