所属変更

「なぁ!? アル!?」


 おれは思わずデモルトを魔法の炎で焼き払ってしまった。

 見ていてあまりにも不快だったので、ついな。


 もちろん手加減をしたから、死んではいないだろう。


「ユースケ、お前が早く倒さないから、不快なものを見せられたではないか。どうしてくれる」


「どうしてくれるって、お前、ありゃねーだろ!? なんでおれの決闘シーンに割り込んでくるんだよ!?」


「だから言っているではないか。不快なものを見せられて、気分が悪くなったからだ」


 あんな光景見せられたら、誰でも具合が悪くなるだろうよ。


「そういう事じゃなくてだな!?」


「ギャアァー!!? おれの可愛いロベルトちゃんがあああぁーーー!!!」


 デモルトが大泣きしながらウォーキャットに縋りついている。

 ウォーキャットは炎の魔法で、毛が黒焦げのチリチリになっている。


「あぁ……ロベルトちゃん……」


 ふむ。

 この様子じゃあ、決闘騒ぎどころじゃないな。


「ユースケ、どうやら奴は、決闘どころじゃなくなったようだ。お前の不戦勝だな。さっさとギルドに戻って所属変更の手続きを済ませるぞ」


「不戦勝て、お前……」


「ひでぇ」

「悪魔の所業だ……」

「不快ってだけで、容赦なさすぎだろ」


 ユースケは不満そうだし、外野も煩いが、別におれが気にする事じゃない。

 おれはさっさと所属変更を終わらせたいんだ。


「ほら、行くぞ」


「ちょ、引っ張るなよ! 歩く! 自分で歩けるから!」


「ご主人様かっこ悪い」


 どうやらフェミリアの中で、ユースケの株が下がったらしい。

 さっさと攻撃しないからこうなるんだ。


「あぁ、おれのテンプレイベントがあああぁーーー」


 知らんよ。そんな事。


「すまない、待たせたな。おれがアルで、こいつがユースケだ。所属変更の続きを頼む」


「は、はい。分かりました」


 おれとユースケは無事にコサイム所属の冒険者になれた。

 ついでに受付嬢にお勧めの宿屋を聞いてみると、醇風亭というところが飯も宿の質もいいらしい。


 受付嬢に礼を告げ、おれ達は醇風亭へと向かった。

 途中、街並みを眺めてみると、魔道具屋なるものと、武器屋が多くあるように感じた。


 迷宮では魔道具が手に入るからな。

 迷宮都市と呼ばれるこの街に魔道具屋が多くあるのは、当然なのだろう。

 燃料となる魔石も、迷宮で魔物を倒せば手に入るからな。


 だが、何故武器屋がこうも多いのだろうか。

 単純に、迷宮目当ての冒険者が多いからだろうか。


 中を覗いてみない事には分からないが、店の外から見える範囲の武器でも相当に質がよさそうに見える。

 なにか特別な技法で作られているのだろうか?


 おれは、ちょっとした観光気分でいた。

 やはり、新しい街というのは、心躍るものだな。

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