山人族
翌朝、おれは醇風亭で朝飯を食べていた。
昨日の夕食も美味かったし、当たりだなこの店は。
教えてくれたギルドの受付嬢に感謝だな。
「んあ、おはようアル」
「アル、おはよう」
ユースケとフェミリアが起きてきたようだ。
こいつら、同じ部屋に泊まっているんだが、特になにかあったという様子はない。
まぁ、今までもそうだったしな。
ユースケはへたれなんだろう。
「おはよう。お前らにしては起きるのが早いな」
ちなみにおれは、起きてからもう一時間以上経つ。
ゴブリンキングに苦戦して以来、朝早くから剣術の稽古をしているからだ。
「あぁ。なんたって今日から迷宮に行くんだろ? そんな楽しそうな事があるのに、いつまでも寝てられっかよ!」
「ご主人様、昨日の夜からソワソワしてた。子供みたい」
「誰が子供だよ! 迷宮と聞けば男なら誰だってワクワクするんだよ! なぁ、アル!」
「ユースケ程ではないが、まぁ、否定は出来ないな」
「ほらな!」
ユースケは自信たっぷりに微笑む。
フェミリアはどこか呆れ気味だ。
「それよりユースケ、今日から迷宮に潜るつもりだが、フェミリアはどうするつもりだ?」
「もちろん連れていくけど?」
「はぁ……。そう言うと思ったが、それなら装備くらい整えてやってはどうだ?」
フェミリアは武器も防具も持っていない。
いくら獣人族だろうと、これでは厳しいだろう。
「あ、やべっ! 忘れてた!」
「ご主人様、馬鹿」
「相変わらず抜けたとこがあるなお前は」
「ぐ、否定できないのが辛い」
という訳で、迷宮に行く前に、フェミリアの装備を整える事になった。
ユースケがフェミリアに尋ねたところ、軽装がいいとの事なので、防具屋に行き革の胸当てを、武器屋に行き短剣を購入した。
支払いはユースケだ。
各々の装備や飯代や宿代までおれが払うつもりはないからな。
そこは給金の分から上手く使ってほしい。
「それにしても、この短剣高いよなー」
ユースケがぼやいている。
だが、確かに通常より高い気がした。
その分質は良さそうだが。
「なに言ってんだいあんちゃん。ドワーフが鍛えた鉄から作った武器なんだから、これでも安い方だよ!」
「
本で読んだ事がある。
そんなドワーフだが、彼らは鍛冶を生業とする。
ドワーフが鍛えた剣は、大変な価値があると昔親父殿が話してくれた。
ちなみにうちの家に代々伝わる、今は兄貴が継承している剣こそが、ドワーフが鍛えたものだ。
そんなドワーフが鍛えた鉄から作った剣か。
特殊な鉄なのだろう。
品質の良さが感じられる。
なんでもこのコサイムから北の方にある山にドワーフたちは暮らしており、交流があるそうだ。
鉄などもそうだが、ドワーフが作った剣などの武器も時折卸して貰っており、コサイムの武器屋では購入する事も出来るとのこと。
もちろん相当な金額がするらしいが。
ドワーフ製の剣か。
憧れるな。
いつか手に入れてみたいものだ。
最凶の魔法使い、魔術の世界へ転生する! ~古代語魔法に不可能はなし!?~ 海川山男 @1738059
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