殺人
「お前もおれらの事を駆け出しだと思っていたのか? これでも三等級なんだが。 そんなに弱そうに見えるか? というか駆け出しが大金貨六枚も持っている訳ないだろ」
おれはアイサンに不満をぶちまけた。
どうやら戦闘で気が立っているようだ。
「いや、その、すまない。どっかの貴族のボンボンが冒険者を始めたのかと思っていた。王都じゃよくある事なんだ。貴族の次男、三男が冒険者に憧れを持つのは。勘違いしていた、許してくれ。それと助かった。ありがとう」
「まぁ、別にいいけどよ」
王都じゃ冒険者は若者の憧れの職業なのか。
まぁ、あんな都会に住んでりゃ、冒険者の実態なんて伝わらず、物語のお話なんかでしか知らなさそうだしな。
「それより、そろそろあいつらの所に戻ろう。ハンファなんか矢が刺さっていたぞ。心配だろう?」
「気遣い、感謝する」
おれたちは後衛組の元へ戻った。
どうやら、ハンファは治療中のようだ。
矢が抜かれ、アイリスが治癒魔術をかけている。
まぁ、あの程度の傷なら、無事に治るだろう。
おれは、ハンファ達から少し離れた所にいる、ユースケの傍へ近づいた。
「ユースケ、お疲れさん」
「あぁ、アル。お疲れ……」
「どうした? 元気がないな? どこか怪我したか?」
それにしては血の跡がない。
一体どうしたのだろうか?
「あぁ、いや、怪我はしてない。なんていうかさ、おれ、初めて人を殺したんだ……。それで、戦ってる時はどうも思わなかったけど、戦闘が終わって死体を見たら、なんていうか……」
ユースケは魔術で盗賊の後衛を攻撃していた。
おれのように剣で相手取るのと違って、感触が無い分、遅れて実感がともなってきたのだろう。
ん? おれか?
おれも確かにこの世界では初めての人殺しだが、前世で散々殺してきたからな。
今更だ。
ユースケは初めての人殺しで動揺しているのだろう。
こういう時は、どうするべきか。
おれは前世で初めて人を殺した時の事を思い出そうとしたが、なんせ何百年も昔の話だ。
まったく思い出せなかった。
そうしていると、おれ達が乗っていた馬車が近づいてきて、そこからフェミリアが飛び降りてユースケに駆け寄ってきた。
そうだな。
ここはフェミリアに任せておくか。
おれはその場から離れる事にした。
さて、手が空いてしまったがどうするか。
「なぁ、アイサン、盗賊の死体だが、どうするんだ?」
「ん? あぁ、賞金首がいるかもしれないから、首だけ取っておいて、後はアンデッド化しないように、埋めるか燃やすな」
「そうか。なら首を切ったら燃やすから、一か所に集めるのを手伝ってくれ」
「アルは火の魔術が使えるのか?」
「まぁ、そんなとこだ」
おれは、アイサンとオリゴと協力して、盗賊の死体の処分を始めた。
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