学園
商人と共に護衛依頼達成を報告して、報酬を貰った。
それと同時に旅の間倒した魔物の素材を卸す。
といっても、魔石やゴブリンの角くらいしかないが。
旅の始めの頃襲ってきたオークの肉は、旅の間に消費してしまったからな。
全ての清算を終え、商人に別れを告げる。
「護衛ありがとうございました」
「いや、大して魔物も出なかったしな」
「いえいえ、英雄と呼ばれる方が守ってくださるおかげで、私は安心して旅をすることが出来ました。またご縁があればよろしくお願いします。では、私はこれで……」
商人はそう言って冒険者ギルドを出て行った。
さて、報酬を分配しなくちゃな。
ユースケを探すと、二人組の少女に話しかけていた。
あの馬鹿。
まさか本当にパーティを組もうとするとは……
「おい、ユースケ! お前目的を忘れてないだろうな! ここでパーティを組もうとしてどうする!」
肩を怒らせてユースケに近寄ると、ユースケはキョトンとした顔をしていた。
「違うってアル。おれは情報を仕入れてたんだよ。この子たちが勇者の噂をしていたからさ」
「なに? そうだったのか。すまない。早とちりした」
「いいよ、別に。パーティ組みたかったのは本当の事だしな!」
「お前って奴は……」
「ご主人様、気持ち悪い」
真面目なのか不真面目なのか、いまいち分からんな、ユースケは。
「あの……」
「あ、ごめんごめん。こいつはパーティメンバーのアル。気にしないで続きを話してくれ」
「はい。勇者様は先日、学園にてレオンハート侯爵家の御令嬢、ミストラス様と決闘なされたとの事です」
「なんでそうなるんだ!?」
ユースケが驚愕している。
おれも驚いた。
まず、勇者は学園に通っていたんだな。
ラストア王国立総合魔術学園。
魔術とついているが、それは昔の名残で、実際には魔術の他にも、剣術や算術、帝王学など様々な事を教えているらしい。
十三歳から入学可能で、順当にいけば十八歳で卒業する。
貴族、平民関係なく入学を認めているが、実際には膨大な授業料がかかるため、貴族専門の学園といった感じだ。
それと、入学は強制ではない。
貴族と言ってもうちのように余り裕福でない家だってあるからな。
言ってみれば、学園に入学する事自体が一種のステータスのようなものだ。
その学園に勇者は在籍しているらしい。
勇者と言っても、ユースケの話によれば、元々はただの学生らしいからな。
学園で戦う術を身に着けるのも、おかしな話ではないだろう。
問題は、侯爵の娘と決闘したという事だ。
どういうことなんだ?
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