三等級

「こんにちは、アルさん、ユースケさん。お待ちしておりました」


 ギルドへ入るとエリスが声をかけてくる。

 だが、意外なことに、声をかけてくるのはエリスだけではなかった。


「よっ! 英雄殿!」

「この街を救ってくれてありがとうな!」

「お前らのおかげで助かったぜ!」

「一杯飲んで行けよ! 奢るぜ?」


 酒場にいた冒険者たちが、思い思いの感謝の言葉を告げてくる。


 少し前まで予想も出来なかった光景だな。

 ユースケはともかく、おれは触れてはいけない物扱いだったし。


 冒険者たちには軽く手を上げて挨拶し、エリスの元へ向かう。


「エリス、解体が終わったんだってな?」


「はい。こちらが素材の報酬になります」


 報酬は大金貨十枚だった。

 ユースケと分けても十分な金額だ。


「結構な金額になったな」


「はい。ゴブリンキングもゴブリンアサシンも珍しい魔物ですし、丸ごと買い取ってくれる顧客がいましたのでこのような金額となりました。ゴブリンマジシャンを含めた武器の代金も含まれております」


「そうか。ユースケ、半分の大金貨五枚だ」


「アル、それは返済に充ててくれ。代わりと言っちゃなんだが、謝礼金の方はおれが持っててもいいか?」


「あぁ、問題ない」


 謝礼金は大金貨五枚だった。

 二人で合わせての金額なので、一人の額はその半分だ。


 街の危機を救ったんだし、もうちょっと出してくれてもいいのにな。

 ケチだよな、ラース卿って奴は。


 案外余計な事をしてくれたと恨んでいるのかもしれない。

 騎士団の活躍にしたかったみたいだしな。


「アルさん、ユースケさん、今回の件は緊急依頼で正式な討伐依頼は出ていなかったので、討伐報酬は出せませんが、ギルドマスターの判断によりお二人の等級を上げる事になりました。よろしいでしょうか?」


「あぁ! もちろんさ!」


 ユースケが嬉しそうに目を輝かせている。

 討伐報酬はないと思っていたからな。

 嬉しいサプライズだ。


「おれも異存はない」


「では、お二人ともギルド証を出してください」


 おれらの出した鉄で出来たギルド証が回収され、エリスは新たに銅で出来たギルド証を渡してきた。


「こちらが三等級のギルド証となります。この街で三等級にランクアップした方が出たのは久々の事ですよ」


 そう言ってエリスは祝いの言葉をくれた。


 三等級か。

 まさかこの街でランクアップ出来るとは思わなかったな。


 だが、今回の事はイレギュラーな事態だ。

 続けて二等級にとはいかないだろう。


 そろそろ出るべきか、この街を。

 目指すは迷宮都市コサイムだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る