平和
あの騒動から二日が経った。
街には平和が戻ってきている。
捕らえられていた女達も、特に外傷はなく、無事だった。
守備隊や領民に数人の死者が出てしまったが、こればかりは仕方ないだろう。
あの事件のせいで、ゴブリン撃退の隠蔽は失敗に終わった。
全ての領民達の知るところになったのだ。
だが、性懲りもなくこの街の支配者であるラース卿は、さらに隠蔽を重ねようとした。
おれとユースケの元に、ゴブリンキング討伐の手柄を譲って欲しいと使者が来たのだ。
もちろんただではない。
相応の謝礼を出すとの事だった。
ユースケと話し合ったが、これは迷った。
おれとしては、オークションで稼いだ事もあるし、ここは金より名声を取りたかった。
だが、ユースケは借金があるので、金を欲しがったのだ。
しかしこの問題は、意外なところで解決した。
保護された女性達が、おれ達の活躍を吹聴して回ったのだ。
曰く、この街の為に頑張ったのに、活躍が認められないのはおかしい。
曰く、ラース卿は街を代表して、おれ達に感謝を告げるべきだと。
そのおかげで、街中におれ達の活躍が知れ渡り、買収の話は不可能になってしまった。
そればかりか、このままでは不味いと思ったのか、ラース卿から謝礼金も出る事になった。
その条件として、騎士たちと共に街中をパレードするというものがあったが。
おそらくラース卿は、ゴブリンキングを倒したおれ達と、親しい間柄という事にしたかったのだろう。
会った事すらないが。
そして、騎士たちと共にパレードに参加する事で、騎士団も役に立ったという事をアピールしたいのだ。
事実は別として。
そんな訳で、慣れないパレードを終えたおれは、へとへとになっていた。
ゴブリンキングと戦った時より疲れているかもしれない。
ユースケは案外ノリノリだった。
内心名声も欲しかったのだろう。
住民から名前を呼ばれる度に、笑顔で手を振っていた。
そして、ユースケにはもう一つ嬉しい事があった。
フェミリアだ。
解放されて、一度は逃げ出したが、現実を思い知ったのだろう。
逃げ出したはいいが、金もなく当てもなく、人に見つからないように逃げ続けるのは大変な事だったらしい。
獣人は、この国では肩身が狭いからな。
そして疲れ切っている所をゴブリンの襲撃に合い、捕まったと。
それで、ユースケに助けられてからは、彼女の首には奴隷の首輪が付いている。
いつか故郷の近くに連れていくという約束で、その時まで名目上は奴隷でいるらしい。
ユースケは大喜びだ。
そんなに喜ぶなら最初から解放なんかしなければよかったのに。
さて、そんな良い事ばかり続くおれたちだが、まだ喜ぶべき事がある。
ゴブリンキングなどの素材の売却だ。
という事で、解体が終わったとの連絡を受けたおれ達は、現在ギルドへ向かっているという訳だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます