相棒
魔法で夜目を得たおれは、出来るだけ自然にゴブリンアサシンの姿を探した。
いた……。
左斜め前に奴は潜んでいた。
気付かれないように、視線を逸らす。
場所の特定は出来た。
あとは攻撃手段だ。
剣で斬りかかっても、また防がれるだけだ。
ここは攻撃も魔法でするべきか。
しかし、奴の俊敏さならそれも躱してしまいそうだ。
魔法は足止めに使うべきだろう。
多少体力は消費するが仕方ない。
奴に直接魔法を掛けるか。
『
魔法を使った瞬間、おれは駆けだした。
奴はおれが見えていることに気付いて驚いているようだ。
だが、次の瞬間には回避しようとする。
しかし、体が動かないのだろう。
驚愕に目を見開く。
自分の体力が奪われていくのが分かる。
奴が必死に抵抗しているのだろう。
しかし、残念ながら、もう刃が届く距離だ。
距離を詰めたおれは、一太刀でゴブリンアサシンの首を撥ねた。
ゴブリンアサシンの首が宙を舞う。
首筋からは血が噴き出すが、硬直の魔法で固定された体は倒れない。
「ふぅ……」
魔法を解除する。
疲れた。
体力的にもそうだが、なにより精神的に疲れた。
実戦でここまで精神を消耗したのは、初めてではないだろうか。
まるで、親父殿と試合をしているかのような緊張感があった。
ひとえにゴブリンと言っても、さまざまなんだな。
これで、群れを率いる魔物じゃないんだから、さらなる上位種の強さはいったいどれほどなのだろうか。
そう考えると、思わず冷や汗が出た。
おっと、考え事に耽ってる場合じゃなかった。
ユースケの具合はどうだろうか?
「ユースケ、大丈夫か?」
ユースケの様子を見ると、傷は完全に塞がっているようだ。
だが、意識がない。
こんな所で気絶されてても迷惑なので、多少乱暴だが頬をペチペチと叩いて、起こす事にした。
「おい、ユースケ! 起きろ! こんな所で寝てんじゃない!」
「ん……んあぁ、おれは……」
「起きたかユースケ。どうだ? 意識はしっかりしてるか?」
「おれは確か、いきなり首が……っ!?」
どうやら意識が戻ったようだな。
「傷はもう大丈夫だ。ポーションと治癒魔術で治療した」
「そうか、アルに助けて貰ったのか……。それで、なんでいきなり?」
「お前を襲ったのはゴブリンアサシンだ。もう倒したから安心しろ」
「ゴブリンアサシン……そんな魔物が……」
「なかなか強敵だったぞ。ユースケが無事なら二人掛かりで、もう少し楽に倒せたと思うが」
ユースケがいれば、おれが剣で奴を相手取っている間にユースケの魔術で致命傷を負わせられただろう。
一人より二人の方が、単純に手数が増えるからな。
「そうか。すまない、アル。それと、助けてくれてありがとう」
「あぁ。今度は頼むぞ。頼りにしてるからな、相棒」
「相棒か……。それも悪くないな」
すっと口から相棒という言葉が出た。
おれは自分で思っているより、ユースケの事を頼りにしているのかもしれない。
少し照れ臭いがな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます