レア物

 獣人奴隷の次の商品、オークション最後の目玉商品が、おれの作ったアイテムバッグだった。


「さて、皆様、次が本日最後の商品となります。商品ナンバー三十番! なんと! 商人の皆様お求めの品! アイテムバッグです!!」


 司会者が紹介した途端、会場中から歓声が上がる。

 すごいな。ここまで人気なのかアイテムバッグとは。

 さっきの獣人奴隷の比じゃないぞ。


「こちらのアイテムバッグ、そんじょそこらのアイテムバッグとは違います! 多くの物が収納出来るのは勿論の事、なんと、生き物さえ収納してしまえるのです!!」


「なにー!?」

「それは本当か!?」

「なんと珍妙な……」


 会場のざわめきが大きくなった。

 確かに生物も収納してしまうが、それはむしろ欠点だったはずだ。

 それをこうも大々的にアピールするのか。


「その代わり、収納する時皆様吸い込まれませんように気を付けてくださいね」


 司会者が冗談めかしてそう告げると、客たちから笑い声が聞こえる。


「それと生き物を収納出来る代わりに、このアイテムバッグから中身を取り出す時は、ひっくり返して全てを出す事しか出来ませんので、ご了承ください。まぁ、そういう意味でもこちらのアイテムバッグは、誰も未だ持っていない珍品ですね」


 またしても司会者が冗談めかして言う。

 さぁ、客たちの反応はどうだろうか?


「むぅ、一つ一つ取り出せないのか……」

「だがそこを含めてのレア物じゃないのか?」

「生き物を収納出来るという点が素晴らしい。これならコサイムの商人共にも自慢できるぞ」


 おおむね好評のようだ。

 これなら売値もなんとかなるだろう。


「さて、皆さま。よろしいですか? こちらの商品、大金貨七十枚から始めたいと思います。それでは落札される方は」


「大金貨八十枚!」


「八十五枚!」


「八十八枚!!」


「九十枚!!」


 おお、凄い勢いで声が上がっている。


「九十五枚!」


「大金貨百枚!!」


「百十枚!!」


 やった!

 最低目標の大金貨百枚は突破したぞ!

 これで一安心だ。


「百二十枚!!」


「百二十五枚!!」


「百三十枚!!」


「百三十五枚!!」


「百五十枚!!」


 おぉ!!

 百五十枚だと!?

 凄い! 凄すぎる!!

 ただの市販の袋だったものに、ここまで高値が付くなんて!


「百五十枚出ました! 百五十枚です! これ以上の方はいらっしゃいませんか?」


「百五十五枚!」

「百七十枚!」


 百五十枚と落札額を上げた者は、他の客が上乗せするとすかさず声をかぶせてくる。

 しかも金額は大幅アップだ。


「百七十枚! 百七十枚です! 他の方はいらっしゃいませんか!? では、こちらのアイテムバッグは大金貨百七十枚で落札です! 落札者に拍手を!」


 凄い。というか、少し怖くなってきた。

 おれが少し手を加えただけの袋が、こんなに高くで落札されてしまっていいのだろうか!?

 いくらなんでもぼろい商売すぎないか?


 まぁ、断続的に作って売るのは、怪しまれるから無理だろうが。


 おれが作った事がバレて、永遠アイテムバッグを作り続ける人生だなんて嫌だからな。

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