報酬

 さて、ユースケと話はついたし、さっさと帰ろう。


 本格的に体がダルい。

 きつい魔法を使いすぎた。

 最近毎日オークを狩って、体力がついてきたなと思って油断した。


「ユースケ、サンドリザードは倒した事だし、早く帰ろう」


「あぁ、そうだな……」


 再び素材袋にサンドリザードの死体を入れ、帰路に着いた。

 帰り道は特に会話もなく、静かなものだった。




          ◆◆◆




 ギルドの酒場は今日も賑わっている。

 おれとユースケの組み合わせが珍しいのか、伺うような視線が鬱陶しい。


「依頼達成してきたぞ。」


 そんな視線を無視して、エリスにそう告げた。


「お疲れ様です。討伐おめでとうございます。それで討伐証明部位は……?」


「あぁ、それなんだが、どこか広い場所はないか?」


「アル、それなら裏手にギルドの解体作業場がある。おれはいつもそこで出している」


「あ、ユースケさんの魔法の袋アイテムバッグに入れてあるんですね。では、解体作業場に行きましょうか」


 エリスは勘違いしているようだが、まぁいいだろう。

 受付カウンター横の扉を潜り抜け、解体作業場へとやってきた。


 何人かギルドの職員と思われる者が魔物の素材を解体している。

 素材は圧倒的にオーク肉が多いな。

 ここで切り分けて業者に卸しているのだろう。


「それではここに出してください」


 エリスにそう言われ、おれは素材袋を逆さにして振る。

 するとサンドリザードの死体が現れた。


「あれ、なんだかいつもと違うような……。というかアルさんが出してる!? アルさんもアイテムバッグ持っていたんですか!!?」


 エリスが驚愕している。

 しまった。ユースケのアイテムバッグに収納して貰うべきだったか。


「まぁ、いいじゃないか。それよりこれで依頼達成の証明になっただろ? 報酬が欲しいし、さっさと受付へ戻ろう」


「はぁ……分かりました。一旦この話は置いておいて、戻りましょうか。解体はギルドに任せるという事でよろしいのですね?」


「あぁ、頼む」


 おれらは一度受付に戻る事にした。

 というかユースケ全然喋らないな。

 まだ魔法の事について考えているのか?


「では、サンドリザード討伐の報酬ですが、商業ギルドからの急ぎの特別依頼なので金貨三枚になります。これはお二人で金貨三枚になります。分配は話し合って決めてください。素材は解体が終わってからなので、後日となります。」


 金貨三枚か。

 半分に分けても十分高額だ。


 ただし、事前に報酬の分配方法を決めていなかったから、揉めるかもしれないな。

 ほとんどユースケの魔術で倒したようなものだし。


「ユースケ、報酬の分配だが……」


「半分に分けりゃいいんじゃねーの?」


 ユースケはあっさりそう言ってくれた。

 やっぱり根は素直でいい奴だな、こいつ。

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