東の街道へ

 昨日は宿に帰って飯を食べたら、剣の手入れをして寝た。

 この世界、娯楽が乏しいからなぁ。


 前世で王と卓上遊戯をした記憶が思い出される。

 子供の頃は素直な奴だったんだがなぁ。

 なぜあんなに聞かん坊になってしまったのか。


 おっと思い出にふけるのはまた今度にして、朝食を食べたら出かけよう。

 時間は有限だ。


 今日の目標はオーク!

 目指せランクアップだ!


 あ、武器屋でガントルの斧は金貨二枚で売れた。

 それなりに良い品だったらしい。




          ◆◆◆




 冒険者ギルドにて、おれはエリスにオーク討伐の依頼を受けたいと申し出た。

 四等級の依頼だが、常時依頼なので受けられるはずだ。


「そんな! 早すぎます! 一昨日冒険者になったばかりじゃありませんか!」


 エリスは反対してくるが、おれの意思は固い。

 ゴブリンじゃ相手にならなかったし、金を稼がなくちゃいけないからな。


「登録したてだって別に弱いとは限らない。そうだろ?」


「ですが……」


 昨日のガントルの一件を思い出しているのだろう。

 反論の言葉が尻すぼみになっていく。

 銅級三等級冒険者に勝ったことで、おれの実力はそれなりに分かるはずだ。


「そういえば、昨日はあの後ガントルさんが追いかけていきましたが大丈夫でしたか? いえ、ここにこうしているという事は大丈夫だったんですね。むしろあれからガントルさんの方を見かけてないし、もしかして……」


「殺しちゃいないさ。まぁ、死んだ方がマシと思うくらいの事はしてやったが」


「そうですか……。あまり無茶はしないでくださいね。ギルドはギルドの外での冒険者同士の諍いに関与しませんが、あまり酷い事になったら事件になって衛兵に捕まっちゃいますから」


 まぁそのへんは大丈夫だろう。

 なんせカエル語は人間には理解出来ないからな。

 ガントルが衛兵に訴えるのは無理だろう。

 まぁ野垂れ死んでなきゃの話だが。


 んー、少しやりすぎたか。

 昨日はあまりのしつこさにイライラしていたからなぁ。


「まぁ、大丈夫だ。問題になるような事はしていない。それよりオーク討伐の依頼だが」


「はぁ……。分かりました。冒険者ギルドは冒険者の意思を尊重しますからね。オークは東の街道から少し離れた山付近に出没します。討伐証明部位は鼻、素材は魔石と肉が有用です。オークは武器を持っていますので、気を付けてください」


「分かった。情報ありがとう。行ってくる」


 武器を持った魔物か。

 どれくらいの実力なんだろうな。

 修行になるといいんだが。


 おれはオークに期待しながら、東の街道へ歩き出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る