ゴブリン

 最初に戻ってきたのはサモニアだった。

 顔を小突いたのだろう。所々血を流したゴブリンを二匹連れてきた。


「よし、よくやった」


 肩に降り立ったサモニアを褒め、ゴブリンと対峙する。

 ゴブリンは、おれがサモニアの主人だと分かったのだろう。

 ギーギー煩く言いながら突撃してくる。


 しかし、そこには連携も何もあったもんじゃない。

 足の速い方のゴブリンの目を切り裂き、そのまま回転するように勢いをつけてもう一匹のゴブリンの首を撥ねる。

 その後、目を抑えて煩く泣き喚いているゴブリンの首も撥ねる。


「やっぱり雑魚だなこいつら」


 二匹のゴブリンの素材を回収し、死体はサモニアに与える。

 一番最初に帰ってきたから最初の一匹の分もだ。


 悪魔は他の生物の血肉を好む。

 沢山の血肉を啜った悪魔は、上位の存在に進化するからだ。

 だからおれはこいつらを強くする為に魔物の死体を与える事にしたのだ。


 前世ではいなかった魔物という存在の血肉だが、人間の血肉で上位の悪魔になれたのだ。

 同じ"魔"に属する魔物の死体なら進化も早いだろう。


 サモニアがゴブリンの死体を貪っているのを見ながらそんなことを考えていた。

 あんな小さな体のどこにそんな入っていくんだと思うが、まぁ魔法生物なので考えるだけ無駄だろう。


 っと、次が来たようだな。

 お次はアンモイが三匹か。

 剣術の練習相手にもならないし、ここは魔法で殺すか。


ファーニング炎よ!!』


 古代語を唱えるとどこからともなく炎が現れて、ゴブリン三匹を丸焼きにする。


「んん。やっぱり種火も無しに魔法で炎を具現させると疲れるな。そうだ! 火属性の生活魔術の火種を使えばどうなるんだ!?」


「ニャー!」


 さっそく実験しようとした所に、ルシウスが戻ってきた。

 ゴブリンを五匹連れている。大手柄だ。


「よし、じゃあさっそく……ん?」


 よく見ると四匹のゴブリンが一匹のゴブリンを囲うようにして移動している。

 しかも真ん中にいるゴブリンは杖を持っている。

 あれは小鬼魔術師ゴブリンマジシャンという奴か。


 のんきにそんな事を考えていると、ゴブリンの集団は一定の距離を保った所に止り、火球ファイヤボールを放ってきた。


「舐めやがって。そんなとろい魔術が当たるかよ!」


 剣で魔術を斬り裂き、火種の生活魔術を行使する。


ファイヤ! そして」

ファーニング炎よ!!』


 剣先に発生した小さな火種が、古代語により大火へと姿を変え、剣に纏わりつく。


「このまま焼き斬ってやるよ!」


 炎の魔法に驚くゴブリンたちを問答無用で斬っていく。

 一匹、二匹……三匹、四匹……


 四匹の雑魚を斬り捨てたところ、ゴブリンマジシャンが森へ逃げていく。


「逃がすかよ。魔剣斬スラッシュ!」


 ただ魔力を飛ばして斬る技のスラッシュが、炎を纏ったままゴブリンマジシャン目掛けて飛んでいき、その体を胴から上下に分裂させた。

 切り口から炎が上がっている。


「ほう、こりゃいい。差し詰め炎魔剣斬ファイヤスラッシュってとこか」


 一方的な戦闘だったが、新しい魔法や魔術の可能性が見え、おれは満足したのだった。

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