戦士と魔王が始める村人生活
一ノ清カズスケ
魔王討伐の旅は終わりへと近づいていた
第0話 魔王との決着
「そんな奴に、俺の命はやれない。」
ここで死ぬ、それが彼の答えだった。
「そうか、ではここで死ぬのだな。」
彼女の問いに彼は頷くことは無かったが、目を硬く瞑りその時を待つ。
魔王。人を脅かす存在であり、異形の存在。それが彼の目の前に佇んでいる。
町では魔王に対する様々な情報が行き交っていた。男で獅子の頭に巨人の体をしている、魔王の城そのものが魔王、魔王が人間を見つめれば瞬く間にその人間は灰のようにバラバラに崩れ去る、などなど。
だが、目の前の存在はそれらの情報が全く当てにならない。
全ての攻撃が今までに見たこともなく、彼らの消耗は激しかった。そして、人ならざる思考による策の数々。
結果として彼らは敗北した。仲間の一人が急所を貫かれて死にかけ、彼自身も片腕を折る怪我を負った。
全滅という最悪の展開が脳裏をよぎる中、それでも彼は僅かな隙でも作りだせればと歯を食いしばり、目の前の存在に立ち向かった。
なんとか彼は他の3人をここから逃がすことに成功した。次こそ、あの3人は魔王を倒す事ができるだろう。
自身の命を彼女に委ねる形となったが。
自らの口で発した、生きることを捨てる言葉。
「では、その首を切り落とすとしよう。」
目の前の存在から放たれる死の宣告。
その決断に後悔はない。だが、それでも。
(嫌だ・・・・・・嫌・・・・・・。)
死まで数刻と迫った中と、もう見栄を張る相手も居なくなった事から、彼の内に仕舞われていた恐怖心がさらけ出される。
歯は震えでガチガチと鳴り、両手は何かに祈るかのように前で組まれている。
「フフ・・・・・・。」
そしてとうとう、彼女が彼の首に手を掛け床へ押し付ける。
指からは熱を帯びた首の温度が伝わり、熱がじんわりと彼女の掌へと広がる。
「うっ・・・・・・ぐっ・・・・・・。」
彼の喉から苦悶が漏れる。ひんやりとした手が首に食い込み、一つ一つの指が蛇のようにそこを締め上げる。
そして・・・・・・。
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