第41話 私、フラれました

「総士。」


朝食を食べ終わり、片付けをしているところで姉貴に呼ばれた。


「なんだよ。」


低血圧の姉貴の朝は無愛想。

こちらも無愛想気味に答える。


「あんたが史華ちゃんと付き合ってるってことが3年にまで広まってきたよ。"聖川さんの好きなやつに彼女ができた"ってね。これであんたには害がなくなると思うけど、代わりに香澄に害虫が群がるはずだからあんたも駆除手伝いなさいよ。」


害虫ってえらい言いようだな。


「それ、俺が口出ししない方がいいんじゃないか?逆効果になりかねないし史華に誤解与えたくないんだけど。」


まあ、史華は信用してくれてはいるだろうが、他の女を守ってるのを見るのもいいもんじゃないだろ。


「・・・一度史華ちゃんを家に連れてきて。」


「はあ?なんの用だよ?」

説得でもしようってのか?

俺が了承してないのに史華に話すってのもおかしいだろ。


「お母さんが会いたがってたよ?この前の打ち上げの時はまだ付き合ってなかったから紹介してなかったでしょ?あんたと話してるのは見てたからすごく話したいみたいだよ。」


話の流れがおかしくないか?

香澄の話は無関係でいいのか?

でも小さい頃から姉貴は香澄を妹のように可愛いがっている。

あのも俺に付き合ってくれてはいたけど、ずっと気にしてたからな。


「姉貴が話したいじゃなくて母さんが話したいんだな?」


「私だって話したいに決まってるじゃない?悪いようにはしないから連れてきなさいよ。」


悪い予感しかしないんだけど。

だいたい俺に何を期待してるんだ?


香澄には妹扱いするなって言われてるのに。

幼馴染だからって出しゃばるのはおかしいだろう。


「総士、水出しっぱなし。余計なこと考えずに史華ちゃん連れてきてよ。」


考えるのに夢中で洗い物していたのを忘れていた。


「検討するわ。」


♢♢♢♢♢


『バサッ。』


あ〜、なんだろこれ。私の下駄箱いつの間に郵便ポストになったんだろう。


足元に散らばる封筒の山。


「あらま。こりゃ大漁だね。とりあえず拾っちゃおうか。」

みやびちゃんは鞄からレジ袋を出し、手際よく封筒を拾っていく。


「みやびちゃん。用意いいね。」

いつも持ち歩いている可能性もあるけど、手際が良すぎる気がする。


「う〜ん。そろそろかなって思ってはいたんだよね。綾音さんからも噂が広まってるって聞いてたし。」

なるほど。

そうちゃんに彼女ができて私がフラれたのが知れ渡ったのね。

なんか、それはそれでやるせないなぁ。

 

「みやびちゃん。これどうしよう?さすがに教室で広げるわけにもいかないし、かといって放置して後で問題になっても嫌だし。」


先に歩くみやびちゃんに相談すると、


「大丈夫だよ。もう手は打ってあるから。」

みやびちゃんは階段を上がると教室とは反対側に歩いて行きます。


「え?ちょっとみやびちゃん?どこ行くの?」


「いいから付いてきて。」


着いた先は生徒会室。


「失礼します。」

「はい、どうぞ〜。」


室内からは聞き慣れた声がする。


「来たね。」

正面の席に綾姉が座っている。


「纐纈さん、そこ僕の席なんだが・・・。」

確か生徒会長さん。

綾姉にひと睨みされて怯えたように後ずさっている。


「雅、どう?」

「動き出しました。ほらこの通り。」

みやびちゃんは先程の袋を綾姉に手渡した。


「はあ、全く懲りない人達だね。とりあえず選別しようか。どうせ香澄のことだから放置しないんでしょ?」


さすが綾姉である、私のことはお見通し。


袋をひっくり返し机の上に広げると差出人を確認して3つの山に分けていく。


「綾姉、どうやって分けてるの?」

不思議に見ていると、


「うん?学年。あ、これいらない。」

はい?名前だけでわかるの?どれだけ有能な副会長さんなの?

綾姉は封筒を会長さんに手渡した。


「いらないって。それを決めるのは聖か」

「いらないって言ってるよね?」


会長さんはそれ以上は無駄な抵抗だと悟ったみたい。


「よし!香澄、これは私が断ってくるから。これだけはあんたが片付けて。」

綾姉は3つに分けたうちの2つを持っていき、1つを私に手渡した。


「2、3年は私が断ってあげるから1年は自分でなんとかしな。相手が危なそうな奴だったら必ず総士に声かけなさい。史華ちゃんには私から断っておいてあげるから。」


そう言うと綾姉は私の頭を撫でた。


「あんたは私の大事な妹だからね。困ったときはちゃんと頼ってね。総士にもとして頼ればいいから。雅も引き続きよろしくね。」


「綾姉・・・。ありがとうね。頼りにしてるよ。」

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