ありふれた終末


何気ない普段の朝のテーブルの風景から始まる、終末への入り口。


それは


一週間後に隕石が地球に衝突する。


よくある話です。ええ、よくあります。


ところがこのお話、計算し尽くされた怖さがあります。


いや、まさしく平凡な「ありふれた終末」。



 最初に読んだ時には、ただ「夜」がなくなっただけで、天候は荒ぶっていないし、ただただ明るいだけで、それは登場人物の飄々とした姿を浮き彫りにしているように感じました。


きっとこの登場人物のご夫婦は、とても幸せな結婚生活を送ってきていて、2人なら終末を心穏やかに迎えられるんだろうなと心が暖かくなるような気すらしました。


ところが


もう一度読むと、飄々としていた登場人物の、本人たちも意識していないだろう狂気のようなものが、コントラストの強い光の中で、


ジワリ


と浮き出てくるのです。


確かにどうしようもなく世界が終わるとなると、こうなるかもというリアルさがすごい……


まさに「ありふれた終末」


作者の矢向氏は以前の企画にも参加くださいましたが、非常に透明感のある文章が印象的な方です。

その透明感が今回の作品では、静かで不気味な「違和感」を生み出しているようです。


筆致が浮き上がらせる、白い恐怖。


お見事です。



作者 矢向亜紀 


「ありふれた終末」

https://kakuyomu.jp/works/16816700426619319141


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