愛と虚しさは友達だけど、
神崎玲央
僕の好きな人
心中は浪漫だよねと君は笑った。
私と一緒に死んでくれる?と君が尋ねてくれるなら僕は迷わず頷いてみせるのに。
そんな僕を君は望まないことを知っている。
優しいねなんて甘い言葉で僕の好意を否定してこの世界でまるで独りぼっちかのような顔をするんだ。
いつも明るい君が時折見せる儚げで死の匂いを漂わせるその表情に惹かれたのも確かなんだけど、それじゃあねと手を振るたびに次はないんじゃないのか何て言いようのない不安に苛まれる。
会えるととっても嬉しくなってまたねを交わしたその瞬間君のことを考えている。その時間を苦だと感じないこの感情が衝動が愛以外の何だと言うのだろう。
けらけらと笑うその横顔を見つめながら君はいつか僕を置いて消えてしまうんだろうな何て考える。その確信にも似た、何か。
いつか来るその日のことを考えて少しだけ淡く、視界が揺れた。
僕は君に何て言葉をかければ良いのだろう。
生きていれば良いことがあるよ、死ぬなんて考えちゃダメだなんて、きっとそんな正論じゃあ君の心には届かない。
本当は、君がいないと寂しいよって伝えたい。
本当は、生きてて良いんだよって伝えたかったんだ。
だけれどきっとその言葉は君を困らせるだけだから。
代わりに僕はエゴにまみれたこの言葉を君に紡ぐのだ。
「ねぇ、好きだよ」
「ありがとう」
あぁ、できることならば僕は。
君の生きる理由になりたかった。
愛と虚しさは友達だけど、 神崎玲央 @reo_kannzaki
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