アルバイトから見たクソ会社

@jiro44jiro

第1話 『俺の会社だ』

 令和元年5月10日朝礼。

 日焼けした社長が怒鳴る『おめぇらここは俺が金を払って借りてんだよ。おめぇらは俺の言うこと聞いとけばいいんだよ。文句あるならさっさとやめちまえ。」

従業員『。。。』いつも黙るしかない。

社長『なぁ店長さんよ。おめぇがしつけしないといけないよな。』

店長はいつものように『。。。』

社長『黙ってんじゃねぇよ。クソが。ここは俺の会社だ。おめぇらは俺の金で雇ってやってんだよ。感謝して働け。いいか。』

従業員『。。。』

 アルバイトの角中伸二は『クソなのはお前だよ』と怒鳴りたかった。しかし、所詮はアルバイト。

 午前10時、埼玉県JR川口駅から徒歩2分の場所にある外観が小汚いレストラン『ルマンダ川口店』には罵声と沈黙のキャッチボール。いや、誰が見ても社長の大暴投だろう。

 店の雰囲気は最悪である。世の中は官房長官が元号発表に掲げた『令和』で盛り上がっている。この店は平成のまま。もしかすると昭和から変わっていないのではないか。

 怒鳴り続ける日焼け社長は満足したのか予定があるのか分からないが1時間の説教をし、帰っていった。

 株式会社ルマンダはレストラン『ルマンダ』を埼玉県内に30店舗を展開している地域密着型の会社である。日焼け社長は2代目で先代の社長が2年前に亡くなり、エスカレーター式で社長に就任したようだ。

 毎朝県内店舗のどこかの朝礼に出て、罵声を浴びせることが日課である。日焼け社長が就任してからは会社も店舗の雰囲気は右肩下がり。業績もかなり落ち込んでいる。

 アルバイトの角中は現在28歳。大学卒業前にフリーターになる決意をした。決意と言っていいのだろうか。『ルマンダ』でのアルバイトは6年目となり、バイトリーダーを務めている。

 角中は国立大学に入学し、卒業後は大手上場企業に内定をもらっていた。しかし、卒業直前に内定先の企業が不祥事により内定を取り消しにされた。角中は何もかも気力がなくなり新しい就職先を探すこともしなかった。

 卒業後実家から近いレストラン『ルマンダ川口店』になんとなくアルバイト入社した。国立大学を卒業した角中からしたら、誰が見てもきっとこの会社はクソ会社だ。

 次の日、日焼け社長が2日連続で朝礼に参加した。こんなことは6年目で初めてであった。何か嫌な予感がする。

社長『今日は店を閉めろ』朝からすごい声量だ。

いつもは黙り込んでいる店長が焦ったように『いやっ、ちょっ、社長なんでですか?』と言葉を発した。

社長は理由も言わずに一言。『ここは俺の会社だ』

 

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