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「ユイリー、おはよう」
「おはようございますっ、悠人様っ。今日の朝食はすべて食品用3Dプリンタで作成した新鮮かつ健康な朝食でございますよっ」
「相変わらずうるさかったけどね……」
「ユイリー、今日は遊園地へ行こうか」
「この遊園地ならばアトラクションの待ち時間はこうでこうでこうですから……。こういう生き方で回れば早いですね」
「検索機能はやっ!?」
「ユイリー、君のために服を買ってきてあげたよー。ほらっ」
「なかなか素敵な服ですね……。着てみましたけど、これ、胸が強調されすぎてませんか?」
「いいんだよ。とっても似合っているよっ」
「悠人様がそういうなら……」
「ユイリー、映画見たいんだけど何かある?」
「わたくしの映画配信機能なら古今東西の映画が、ヴァーチャルシアター4DX機能付きで楽しめますよっ」
「ちょ、ちょっと、こんなに一度にはみられないよっ!」
「ユイリー、今日は僕が体を洗ってあげるよ」
「いいのですか……?」
「そのあとで、今日もいっぱい楽しもうね」
「はい……っ」
こうして僕らは、楽しい日々を過ごした。
ユイリーも僕も、お互いに思い出を、記憶を与えあった。
しかし、その日々も終わりに近づいていた。
僕の手足が順応し、ユイリーのレンタルが終わる日が、近づいていたからだった。
それに僕は気づいていた。でもユイリーには気づいていないそぶりをしていた。
ユイリーには、寂しい思いをさせたくなかったから。
*
「今日は街におでかけですね。どこへ行くのですか?」
「秘密だよ」
レンタル期限が近づいてきたある日、僕はユイリーを連れ出して街へと出かけた。
目指すは……。百貨店のとある場所だ。
ネット通販が当たり前のこの時代でも、高級品なんかはこういう場所で買うのがまだまだ一般的だ。
「ここは……指輪売り場じゃないですか」
「そうだよ。ちょっと君にあげたいものがあるんだ」
ふふん。この日のために、自分の貯金を確認し、ユイリーにばれないように彼女の指の大きさを確認し、ユイリーの知らぬ間に一回下見に行ってきたんだ。
「店員さん、この前注文しておいたもの、届いている?」
「須賀様ですね。はい、ちょっとお待ちくださいませ」
店員アンドロイドが綺麗な音声で応えると、店の奥の方へと歩いていった。そして、商品入れから何かを取り出すと、僕らのいるカウンターの方へと戻ってきた。
「須賀様、ご注文の指輪でございます」
女性型アンドロイドの手のひらに乗せられた紺色の四角い箱。それを店員アンドロイドは優しく開いた。
その箱の中には、眩しく輝くダイヤモンドが飾られたプラチナの指輪が静かに鎮座していた。
「うわぁ……」
それを見るなり、ユイリーの両瞳が大きく見開かれ、口も大きく開いた。それから両の頬が赤く染まり、そのまま息を呑んだ。
ユイリー、とても嬉しそうだ。
しばらくその顔で何も言えなかった様子のユイリーだったけど、ようやくのことで、
「悠人様……。本当に、本当によろしいのですか? 私にこれを……?」
と尋ねてきた。
「もちろん!」
「だってこれ、お高いのでしょう?」
「大丈夫! 預金通帳の中身はちゃんと確認したし! そもそも金に余裕なきゃ、君のような超高性能アンドロイドをレンタルできないと思うし!」
「そ、そうでしたね……」
ユイリー、ますます頬を赤らめちゃって……。本当に嬉しいんだな。
さて。この指輪をっと……。
「さあユイリー、手を出して」
「は、はい……」
僕は箱から指輪を取り出し、ユイリーの左薬指にそっとはめた。指輪はすっと、何の抵抗もなく、なめらかに彼女の指に収まった。
僕をお世話してきた美少女アンドロイドは左手を上げてその薬指にはまっている輝きをしばらく眺め、
「うれしい……」
そう一言、つぶやくように言った……。
「喜んでもらえたようで、何よりでしたね。こちらも作った甲斐があります」
僕らの様を見ていた店員アンドロイドも破顔して言った。
さて、これからがデートの本番だ。
僕は本人認証で支払いを済ませると、ユイリーの手をそっとつないだ。
「さあ、行こうか」
「はいっ」
「ありがとうございましたー」
「ご来店、まことにありがとうございました。お幸せにー」
店員アンドロイドは笑顔で手を降って僕らを見送ってくれた。
僕らは手をつないで百貨店の外へと出た。
夏から秋へと向かう青空は高く、日差しはまだ強かった。
さて、VRシアターで映画を見て、それから高級ホテルで食事をして、それから今日はそこで宿泊だな……。
今日が終われば。
ユイリーのレンタル終了日はもうすぐだ。
僕は隣で歩く彼女の笑顔を見た。
もうこの笑顔に会えなくなるのか。寂しい。
僕は胸を締め付けられた。
もし、このままでいられるのなら、僕は何をしたって良い。いくら払っても良い。何を捨てても良い。
でも。もう終わってしまう。君と僕が過ごした日々が。
どうか。
君の
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