第27話 僕たちは婚約した!

僕たちは1か月後に大島さんの仲人で正式に婚約した。僕は東京へ帰ってからは毎日、紗奈恵とスカイプで話をした。午後10時の定時の連絡を欠かさなかった。


彼女は嬉しそうにそれを受けてくれた。映像が出るからきちんとした身なりでいてくれた。それに連絡を楽しみにしていてくれた。それが嬉しくて励みにもなった。


思っていることは何でも隠さずに話した。紗奈恵も何でも隠さずに話してくれた。この繋がった糸をもう二度と切れないようにしたい。僕はそう思ったし、紗奈恵もそう思っているに違いなかった。


週末に僕は必ず帰省した。僅かな時間の逢瀬だったが、とても時間が長く感じられたのはどうしてだろう。ほとんどの時間がお互いの家への訪問に費やされた。


二人きりになれたのは紗奈恵の部屋にいる短い時間だけだった。ソファーに座って抱き合ってキスしただけだったが、二人の気持ちは十分すぎるほどに満たされた。僕はそう感じていた。


結婚して紗奈恵は東京へ来ることになる。当面は僕の1LDKにそのまま住むことになった。2LDKへの引っ越しを提案したが、狭くても部屋に一緒に居た方がいいとそうなった。二人なら今のままでも住むことができる。僕もその方がよいと思った。


僕は一つだけ気になることがあった。僕の母親と紗奈恵との相性だ。智恵と母親はどうも相性が悪くて始めからぎくしゃくしていた。そしてだんだんと関係がうまくいかなくなった。いつの世も嫁姑戦争はなくならない。


当然のことながら夫婦仲にも影響する。息子である夫はどちらに着くこともできない。中立を維持するしかない。いや妻に付くべきなのかもしれない。智恵にはそうしてやるべきだった。今となってはそう思う。


紗奈恵も夫の母親とは折り合いがつかなかったと言っていた。僕の母親とはどうかと見ているが、相性は悪くはないようだ。二人とも苦い経験があるから、気を遣えるだけ遣っているようだ。僕としてはお互いにうまくやってくれることを祈るばかりだ。


でも今度は何があっても紗奈恵の味方になることに決めている。僕しか守ってやれないし、守り切る覚悟はしている。もう二度と同じ間違いは繰り返さないようにしたい。3度目はきっともうない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る