従者がやばいです
──と、そんな事故で呼び出してしまった私の従者。
身のお世話をしてくれて助かっているのは、間違いないんだけどさ。
でも、目付きがエロいのが難点だ。外面はしっかりしているけど、家の中で我慢が効かなくなるとただの性獣と成り果てる。
その時は私が作ったポーションで、性欲を無理矢理押さえつけて地下室に転がしている。
過去に一度、庭に放り出た時があった。
その時にリリスは一人で、気が済むまで自慰行為をしてやがった。
外に響く喘ぎ声は流石にやばいと思い、こうして地下に放り込むことにしている。
そんなやばい悪魔なリリスさん。
今日は怒ったような感情半分、呆れたような感情半分って感じだ。
「ティア様、今日はギルドに行くのでしょう?」
「え、何かあったっけ?」
「ポーションの売れ行きを確認すると、前日に仰っていたではありませんか」
「……あー、そういえばそんなこと言っていたなぁ」
風の噂を聞くに、ジュドーさんはポーションを良い感じに売り出してくれているようだ。
最初は1000ゴルドという、通常価格の五倍の値段設定で売れるのか心配だったけど、冒険者からの評判は良いらしくてありがたい。
ちなみに、最初の受注数は驚きの1000個。
素材を一から採集して、ゆっくりと気楽に錬成しようとしていた私は、そんな悠長なことを言っている場合じゃなくなって、ひぃひぃ言いながら錬成していた。……懐かしいなぁ。
──あ、嘘です。
受注を受けたその日に創成して、次の日に余裕で1000個用意していました。
ジュドーさんの驚きの顔は、今思い出しても笑ってしまう。
「笑っていないで、早く準備してください」
「はい、すいません」
「もう……仕方ないお方なんですから♡」
「やめて。そこでハートマークつけるのやめて!」
もうやだ……この人怖い……。
「人ではありません。悪魔ですよ」
しかも心読まれているし。
「私は
「ヤベェ奴じゃん……」
何かをされる前に部屋を出て、洗面所に向かう。
当然のように後ろを付いてくるリリス。
私の歯ブラシを持ち、歯磨き粉を塗って私の口へ──
「……いや、歯磨きくらい一人で出来るよ」
「そんなっ! あわよくばティア様の唾液を摂取しようなんて、そんなの全く考えていません! 信じてくださいまし!」
「むしろ信頼出来ないわ!」
そんなコントを繰り広げながら、私達は準備を済ませる。
準備……と言っても私は手ぶらだ。
「そんなティア様。手ブラだなんて」
………………解雇してやろうか、こいつ。
「ああ! 申し訳ありません! 流石にふざけすぎましたわ!」
リリスが私の足にしがみつきながら懇願する。
どんだけ必死だよ。
ほんと、リリスがいると話が進まない。
私が手ぶらな理由は、神の権能の一つ『インベントリ』を使っているからだ。
これは別世界では『収納袋』だったり、『アイテムボックス』だったりと名前を変えて使われている。亜空間に物を仕舞うという便利機能だ。
でも、それらには収納上限が設定されている。インベントリはその上限がない。上限がない収納袋と認識してくれて良い。
それがあるため、私は何も持たずに行動出来る。
「行くよ」
「はい」
玄関に鍵を掛け、ギルドに向かう。
「おう、ティアちゃん! それに、リリスさんも!」
町を歩いていたら、ハラルドさんが声を掛けてきた。私にお水をくれたおじさんだ。
「おは……こんにちは、おじさん!」
「こんにちはですわ」
「おう! 今日は二人してどうしたんだ?」
「今日はギルドに顔を出す用事があってね。そこに向かう途中だったんだ。リリスはその付き添い」
「そうなのか。お昼はまだなのか? 良かったら、帰りはうちに来てくれよ! 割引してやるぜ!」
「ほんと!? ぜひ行かせてもらうよ! ね、リリス!」
「ええ、ハラルド様はいい栄養補きゅ──んんっ! あそこのお店は美味しいですからね。──楽しみです」
ペロリ、と舌舐めずりするリリス。
何でうちの悪魔は、こんな昼下がりから発情しているんですかねぇ。
「そ、それじゃ! 私達は行くね!」
「おう! 待ってるぜ!」
ハラルドおじさんと別れる。
彼だけでなく、町の住人が次々と声を掛けてきた。
どうやら私は、この町のマスコット的存在になっているようだ。
どうやら、この町は子供が少ないし、私が可愛いことが原因になっているらしい。
まぁ、間違いではないな。
「え、自分で言います?」
「うっさい」
適当に挨拶を返しながら歩いていると、ようやく目的のギルドが見えてきた。
昼頃だからなのか、外からでも中の騒がしい声が聞こえるけど、それに構わず私達は中に入る。
すると、そんな私達目掛けて走ってくる人物がいた。
その人は何日も寝ていないのか目元はクマだらけで妙に痩せこけている気がする。足取りは危なっかしく、今にも倒れそうなほどフラフラと左右に揺れていた。
でも、何故かめちゃくちゃ笑顔だ。
それがとても怖い。
これを私は知っている。
『深夜テンション』を通り越した『限界ムーブ』というやつだ。
何日も部屋に籠っていた研究者が見せていた現象を、他の研究者がそう呼んでいたのを覚えている。
そんな限界ムーブをキメている人。それは────
「ティアさーーーん!! お待ちしておりましたよーーーーー!!!」
商業ギルドのギルドマスター、ジュドーさんだった。
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