第66話思い出作り8

 かえでの提案で初めておかんの店に静江を誘うことになった。かえではもう何度も静江と会っているが、私は逆に気まずくて顔も合わせられないでいる。かえでは一時からすると元に戻ったくらい元気だ。だが桔梗に戻らないのは芯からよくなったと思っていないからだ。

 6時にいつも通り静江が帰り私は集金袋を詰めて7時半に銀行を出る。おかんの暖簾を潜ると指定席に姉妹のように仲良く座ってビールを飲んでいる。私を見るとおかんが隣の席を押しのけて私を座らせる。

「最近姉さん見ないね?」

「中国に旅行に行っているの」

と平然とかえでが言う。それから静江の耳元で何か囁いている。すると静江の顔が真っ赤になる。

「ひそひそ話はよくない」

「じゃあ静江がひろし君に伝えてあげて」

と言って自分の席を私と変わる。かえではそのまま私のビールを飲む。

「玉がなくて・・・竿だけ」

 静江が小さな声で耳元で言う。

「静江はねえ、高校の2年生から3年生まで付き合っていた恋人がいたんだって。最後まで行ったってよ」

「どうして別れた?」

「東京の大学に行ってそのままに。でもどうして女性に?」

「かえでに化粧をしてもらって凄く馴染んだ」

「すみれが好き。今度すみれと会いたい」

「そうじゃなくってすみれとやりたいと言うのよ」

 9時半まで妙に盛り上がった3人だった。かえでの熱い気持ちが伝わってきた。

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