第64話思い出作り6
かえでが散歩できるようになった。それで父はここ1週間弁当を作って持ってこなくなった。
「お父さん、11月に中国に行くと言ってたわ。複雑じゃない?」
「いや、なんだかほっとした」
これは本当の気持ちだ。父と母を見ていて何となく父が可哀想に思っていたのだ。そういう私もかえでに会っていなかったら同じだったろう。
今日は8時におかんの店に1月半ぶりに覗く。それもすみれとして行くように約束させられた。それで7時半に戻ってきて久しぶりの化粧をする。
「少し顔が白くなったな?」
「すみれは黒くなったわ」
そう言い合いながらおかんの店に入る。
「どうしたの?ひろし君も来ないし、かえでも」
「二人とも仕事が忙しくなったの」
私が説明する。
「わあ。どて懐かしい!」
「ビールは控えめでねかえで?」
「すみれが私の分も飲んで?」
常連が二人を見詰めている。おかんはその目を監視している。とくに不良の親父が一番危ない。
「雑誌社から返事が来たけど読んでみる?」
とコピーした紙を渡す。すみれの小説1号が本になるようだ。挿絵はかえでとなっている。
「おめでとう!でも私が先輩よ」
と言ってキッスをする。さすがに店の中は大騒ぎだ。
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