第62話思い出作り4

「親父いいか?」

 頼母子の集金に寄った時炊事場の父に声をかけた。父は最近は店のおかずも作るようになっているようだ。家を出てスーパーに寄ってから店に出る。だからその食材でかえでの食事を作っている。

「これかえでからだ」

 封筒に50万を入れている。

「これは?」

「中国に奥さんと娘がいるようだな?」

「・・・」

「これで会いに行けって。母は知っている?」

「いいや。かえでさんに初めて話した」

「どうして?」

「彼女を見ているとなんでも話したくなる」

「受け取ってくれ?かえでのしたいことは何でもさせたいんだ」

「分かっている。でももう少し元気になってからにしたい」

 今日は8時には銀行を出た。酒屋によって缶ビールを半ダース買ってマンションに戻る。

「お帰り!」

 珍しくかえでが起きている。

「お父さんに渡した?」

「ああ、だけど元気になってから行くと言ってたよ」

「だったらどうしても元気にならなくっちゃ!」

 缶ビールを開けてコップに入れる。おかんの店に行かなくなって1月にはなる。かえでが起き上がってコップを差し出す。

「今日は飲みたい気分よ」

「いいのか?」

「うんー、美味しい!」

「美味しいっていいことだな」

「そう、すみれのあの小説本になるようだ

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