子育て編
第21話 乳頭混乱と母乳のはなし
さて、無事に退院した私ですが、その日から実家で赤ん坊との暮らしが始まりました。
特に不安だったのは授乳。
私の場合、病院から左右のお乳を十分ずつ吸わせてからミルクを足すように指示されていました。
いわゆる混合というやつです。ちなみに完全に母乳で育てることを完母、完全に粉ミルクで育てることを完ミと言うそう。
しかしこの混合というのも、中々大変!
夜中に起きてお乳をあげるだけでも大変なのに、お乳をあげたあとに粉ミルクを測り、哺乳瓶に入れて、お湯で溶かしそれを冷まして、赤ちゃんに飲ませたら洗って除菌して――面倒くさいことこの上ない!
母乳オンリーだったらベロッと乳を出して吸わせてるだけでいいから楽だし、お金もかからないのにな~
というわけで、私は頑張って完母を目指すことにしたのでした。
そしていざ深夜の授乳!
病院にいた時から三時間おきに授乳していた私は、赤ちゃんが泣かなくても自然に三時間で目が覚めてしまいます。
とりあえず横を見ると赤ちゃんはスヤスヤ寝ているので、ミルクを作っておくことに。
ミルクをお湯で溶かし、そこから水で覚まします。
右左それぞれ十分、計二十分お乳をあげるので、その間に冷めるだろうと机の上に放置し、その間に赤ちゃんにおっぱいをあげることに。
「ほら、おっぱいだよ~」
でもどうしたものか、乳首を口元に持っていっても、赤ちゃんは首を横に振ってイヤイヤするばかり……。
どうやら、病院にいたころはなんの疑問も抱かずにおっぱいを咥えていたのですが、成長するにつれ、このおっぱいというものは哺乳瓶より飲みにくいようだと気づいた模様。
それでも無理やり口の中に乳首を入れると
「イーーーッ!!」
ギャン泣き!!
それでも背中をトントンして落ち着かせたり何とかしてなだめて無理矢理に左右のおっぱいを飲ませました。
さていよいよミルクです。
すんなりお乳を咥えてくれないのでここまででもう既に三十分以上は経っています。
もうヘトヘト……。
ヘトヘトになりながらも、作ってから時間が経ちすぎてちょっとぬるめになってしまったミルクを哺乳瓶で与えると……
凄い勢いで吸い付く吸い付く!!
さっきまで嫌々乳首を咥えていたのが嘘みたい~!!
赤さん「哺乳瓶の方が咥えやすいし、沢山ミルクも出るでちゅ~!! あたち哺乳瓶のミルクが良いでちゅ~~~!!!!」
※母親の妄想です
すげーーーー食いつく!!
おっぱいが好きで哺乳瓶を受け付けない子供の話は聞いたことがあるけど、哺乳瓶が好きでおっぱいを受け付けないなんて、そんなのアリ!???
後で調べたところ、哺乳瓶ではミルクを飲むのにおっぱいを受けつけないというのは「乳頭混乱」と呼ばれていて、割とよくある事のようで……。
そこでネットで乳頭混乱対策を調べてみると、ピジョンの母乳外来という哺乳瓶を使うといいとありました。
母乳外来は母乳実感よりも乳首の部分が固く、吸う力が強くないとミルクが出にくいのでこれで訓練することにより吸う力がつき、お母さんのおっぱいに吸い付きやすくなる、との事でした。
早速メルカリで買って使ってみると、確かに前よりおっぱいが上手く飲めるように!
良かった~! これで完母を目指せるわ!
母乳実感の哺乳瓶に対応しているので、すでに母乳実感を使っている人は乳首部分を変えるだけでいいというのも良かったです。
というわけで、乳頭混乱を無事克服した私。
赤ちゃんも徐々に朝と夜の区別がついてきたし、完母にすべくミルクと母乳の混合育児を順調に進めていたわけなんですが……
出産から二ヶ月を過ぎた三月あたりから、それは起こりました。
そう、花粉症です。
この時期はもともと飲み薬+点鼻薬を駆使してなんとか凌げるレベル。
しかもクシャミはもちろんのこと、ちょっと鼻水をすすっただけでも寝かしつけたばかりの赤ちゃんにギャン泣きされ、我慢の限界に。
そこで薬局に花粉の薬を買いに行ったところ……どの薬にも「授乳中の使用は医師、薬剤師に相談ください」と書いてあります。
仕方なくドラッグストアにいる薬剤師に聞いてみると――
薬「鼻の薬は強いのでどの薬も授乳中はやめた方がいいですね~!」
…………。
母乳を取るか、薬を取るか……どうする!?
……いや、この時期花粉症の薬なしはどう考えても無理でしょ。
病院に行って授乳中でも問題ない花粉の薬を貰えばとも思いましたが、花粉の薬のためにわざわざコロナやらインフルやら蔓延する病院に行くのもな……
そんな訳で、花粉のために完ミに方針転換することになりました。
せっかく乳頭混乱を克服したのに!
……そんなもんですよね、人生って。
でも右10分、左10分の授乳が無くなったおかげで、夜中三回授乳があるとすると、20×3で60分も授乳時間が短くなりました。
この時期に一時間も睡眠時間が増えるのはデカい!
それどころか、母乳に比べて腹持ちがいいせいか、夜の十一時や十二時にミルクをあげれば朝の五時六時まで寝てくれるようになったのです。
すげー寝れる!!
今までの苦労は何だったんだ~!
カフェインの入った紅茶やコーヒーも気にせず飲めるし、日曜日には旦那に子供を預けて美容院に行ったりカフェで一息、なんてことも!
すごい楽!!
今となっては何で完母なんて目指してたんだろう? という感じです。
カフェでノンカフェインやデカフェのメニューを探さなくてもいいのは凄く楽だし、将来どうやって断乳しようかと悩む必要もない!
幸い完ミでも関係なく成長曲線ど真ん中ですくすく成長してるし、みんなもっと粉ミルクに頼るべきだよなーと思いました。
粉ミルクは偉大!!
(※お金はすごくかかるけどね……)
ってなわけで、完母を目ざしていたはずの私は、生後二ヶ月ごろから無事、完ミに移行したのでした。
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