第8話 駄々


 ホビーショップにて。



 今日、僕は駄々を見た……。

 それは、今まで見たどんな駄々よりも美しい駄々だった……。



 床に仰向けに寝転がる4歳くらいの男児。

 手足を大きく広げ、その姿はあたかも五体投地を思わせる。


 そしてはるかな高み虚空の星に向けるかのように泣け叫ぶ。


「買って!買って!買ってー!」

 そして、激しく手足を床に打ち付ける。


 うら若き母親がそれを諭す。

「駄目よ、たっくん。そんなにワガママ言わないで」


「ヤダ! ヤダ! ヤダ! ヤダ! 買ってよー!」

 さらに激しく手足を振り回し、仰向けのままグルグルと回転を始めた。


「そんなにワガママ言わないで、お願いたっくん」

 母は寂しそうにそう言った。


「ほし、ほし、ほし、ほしーーいの!」

 だが残念な事にその駄々は、その時、突然終わりを告げた。


 “ゴンッ!”


 あまりに激しく手足を振った為、遂に頭を床へと打ち付けてしまったのだ。



 そこからは、マジ泣きだった……。

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