地球の人?


 巨大宇宙船。とある惑星に戻る最中である。宇宙船には、その星の代表生物が何十匹も各々の時間を過ごしていた。皮膚の色が紅藤色で大きな黒目、平均サイズが地球人の子供くらいであり、頭部から四本の触覚を生やしている、それが宇宙人たちの外見的特徴だった。


 ラウラウ星人、とその星で呼ばれた者たちの大半は宇宙船のロビーに集まっていた。そのうち三匹が中央の机で星独特のカードゲームを行っていた。


「はい、俺の勝ち〜」


「うわ。四役かよ」


「完敗だ」


 特殊な言語で交わされていた。一匹が腕を掲げ、残り二匹が分かりやすく落胆した。


「これで、権利は俺のものな」


「あーわかったよ。好きにしろ」


「ちきしょう。変わった生物だから僕が解剖したかったのに」


 つい三日前、ラウラウ星人が乗るこの巨大宇宙船は地球に降り立っていた。地球の代表生物を拉致して研究材料にするためだ。そしてそれは成功して、最初に見つけた喋る生物を無事に宇宙船に閉じ込めた。喋る、というのがラウラウ星人にとって代表生物と判断するポイントだった。


「ちょっとあいつで遊ぶか」


 一匹がそう提案した。


「お、いいね。痛めつけてやろう」


「ちょっと連れてくる」


 一匹が別の部屋に移動し、数分してから地球にいた生物と共に戻ってきた。その者は、何やらラウラウ星人たちにとって聞き慣れない単語を並べて喚いているようだった。


「なんて言ってるんだろうな」


 カードゲームに勝利したラウラウ人が悪戯っ子のような笑みを浮かべていた。


「多分、やめてくれ俺を解放してくれ、みたいなことだろうね」


「さて、まずは電流を与えてみるか」


 ラウラウ星人が触覚の一本を伸ばし、地球にいた生物の体に絡めた。その瞬間、目に見えるほどの電流が体を覆い包んだ。


「お、まじか、まだ生きてる。案外地球人って強いんだな」


 ラウラウ星人たちが腹を抱えて笑う。


 その間、地球にいた生物は伝わるはずもない言語で喉が枯れてしまうくらいに叫んでいた。


「俺は地球人じゃねー! 俺はたまたまあの星に降り立ったユンユン星人だ! 早く解放しろー!」

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