秘密戦隊ミレンジャー
ここは秘密戦隊ミレンジャー対策本部。隊員はレッド、ピンク、グリーンの三人で構成されている。
昼間、リーダー室でレッドが青汁を飲んでいると、突然両扉が勢いよく開いた。ピンク隊員だった。
「どうしたピンク。何があった」
ピンクは汗だくで焦燥を浮かべていた。
「大変よ。グリーンが悪の組織ヘブンのアジトに一人で突撃して……」
「なんだって!?」レッドは思わず立ち上がった。「それで、やられたのか!?」
「いいえ、それが向かう途中に車にはねられて近くの病院に搬送されたみたいなの。今病院から連絡があって」
「なに!? それで無事なのか!?」
「命に別状はないみたい」
「よし。今すぐ病院に向かうぞ」
レッドは急いで本部用の制服を脱いで、しまむらで買った服装に着替えた。
病院に着くと、二人はグリーンのいる病室へと向かった。そこではグリーンが包帯ぐるぐるでベッドに横たわっていた。
「おいグリーン! お前それ誰にやられたんだ!?」
「車さ」
グリーンがぼそっと言った。
「それさっき説明したでしょ。あとレッド、大声出さない」
ピンクが咎める。レッドは「あっ」と口元に手をやった。ついつい熱くなって身の回りが見えなくなるのがレッドの短所でもあり長所だった。
「それで、いつ治るんだ」
レッドは声を落として聞いた。
「全治三ヶ月のようだ。あちこちの骨が折れちまってる。クソ、ミニクーパーの野郎……こんなはずじゃなかったのに」
グリーンは顰め面で悔しがった。
「ねぇグリーン」とピンク。「どうしてヘブンのアジトが分かったの?」
ミレンジャーはこれまでもヘブンの拠点地を探し続けてきた。敵は身を隠すのが上手く中々見つからないでいた。にも関わらず、グリーンはそれを見つけ出したというのだ。
「ああ、Googleマップにのってたよ」
「え、嘘!?」
ピンクが慌てるようにスマートフォンを取りだし「Hey Siri、近くのヘブンはどこ?」と声を出した。
「どうだ、見つかったか?」
レッドがピンクの携帯を覗き込む。
「確かにあるけど、株式会社ヘブン……これ違うんじゃない?」
「俺もそう思って一応確かめようと、そこに電話をかけたんだ」
「そしたら?」
「間違いない。悪の組織ヘブンですって名乗りやがった」
「なんだと!? ピンク、今すぐ向かうぞ!」
「待ちなさい」
ピンクが飛び出そうとするレッドの腕を掴んだ。
「馬鹿。罠に決まってるでしょ。てかグリーンもなんでなんの相談も無しに一人で行くのよ」
「だって……」とグリーンがシーツを力強く握る。「一人の方がかっこいいかなって……」
ピンクが「呆れた」とわざとらしく溜息を吐いた。
「クソ! グリーンをこんなにしやがって、絶対に許さん」
「車なんだけどね」
「ピンク。仇を取りにいくぞ」
「だから車だって。あと二人で行くのも危険よ」
「この悔しい気持ちがあったら二人でも十分戦える! ほら行くぞ!」
「あ、ちょっと!」
レッドはピンクの手を取って病室を後にした。グリーンは二人の背中に「車には気をつけてね」と軽く手を振る。
静かになり、グリーンは一人、罪悪感と羞恥心に苛まれていた。
――言えないよな。車にひかれたのもこの包帯も全部嘘で、実は包茎手術に失敗したなんて、言えないよな。
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