番外編 クリスマス


「シオン、もう少しでクリスマスよ、クリスマスっ」


 母が突然そんなことを言った。

 この世界にもクリスマスはある。イベントが好きすぎる日本人の転生者の仕業だろう。

 私は今でもプレゼントを貰っている。


 この世界のクリスマスは地球とは少し意味合いが違い、地球のクリスマスはキリストの誕生を祝うものだが、この世界のクリスマスは一年の平和を神に感謝するものだそうだ。

 そして神からの贈り物としてクリスマスプレゼントが貰える。


 だが実際はどうなのだろうか。本当に神の贈り物だろうか。親が配っているのではないのか。

 今回のクリスマスは三人衆と共に送り主の正体を暴いてみようと思っている。


「ということで集まってもらいました」

「そういう理由だったのか」

「そういうのって親でしょ?」

「子供の夢を壊すようなものだな」

「で、具体的にはどうやるの?」

「夜の街に潜み監視するか、ベッドで待ち伏せる」

「二つ目の方がいいかな」

「じゃあ、各自ベッドで待ち伏せをするということで」

「それなら俺たちいらなくねぇか?」

「検証結果は多い方が確実です」


 そんなわけでプレゼントが貰える日の夜はベッドで寝たフリをして待ち伏せるということになった。


 クリスマスイヴ当日。


「さあ、皆んなできたわよー」

「おお、さすが母さんだな。旨そうだ」


 夕食はお母さんが作ったターキーやその他もろもろ。

 どれもこれも美味しそうだ。


 夕食を楽しみ終えると、クリスマスケーキが出された。

 こちらもお母さんの手作りでかなり凝ったケーキだ。


「お前ら、今日は早く寝るんだぞ」


 ケーキを食べ終えるとお父さんがそんなことを言った。


 言われた通り、今日はもうベッドにつき、寝るフリをした。これで寝落ちをしてしまっては何の意味もない。


 どれぐらいの時間が経っただろうか。

 いつも以上に眠い。このまま寝落ちしそうになる。


ガタガタっ

「ッッ!?」


 来た。窓から入ってきたようだ。

 足音は聞こえないものの近づいてくる気配がする。

 そしてすぐ近くまできたところを――


「捕まえた」

「えっ」


 ベッドに押し倒し馬乗りになる。

 そこにいたのはなんと、天使だった。その言葉の通りで天使だった。天使のような美少女ではなく、翼の生えた天使だ。


「な、なんで起きてるのっ」

「あなたを捕まえるためです」

「そんな睡眠魔法は効いてるはずなのに……」

「やはり魔法でしたか」

「さすがだね、あの魔法に抵抗するなんて。それで私を捕まえて何をするつもりなの。場合によっては天罰が下るけど」

「私の前世の兄さんの写真を大量にください」


 私はいいたかったのだ。兄さんの写真が欲しい、と。


「え、そんなことでいいの? 私の体をくださいって言うのかと……」

「興味ありません」

「んぐっ。分かったよ、今神様から交渉してすぐにもらってくるから、寝て待ってて」

「本当ですか?」

「うん、神に誓って本当」


 そういうので彼女を離した。


「じゃ、寝て待っててね。あ、あと私たち天使のこと他の子に言っちゃダメだからね」


 そういって彼女は窓から飛び去っていった。

 まさか、本当に神様からの贈り物とは……驚いた。


 ◇◇◇


 朝、目が覚める。どうやらあの後、すぐに寝てしまったようだ。


「ん? これは……ふふっ」


 枕元に手紙とアルバムが五冊、置いてあった。

 手紙にはこう書いてあった。


『シオンさんへ


 あなたの兄さんについてですが数年以内に再開できます。

 ですので安心してください。


 それと私から一つ。

 好き嫌いはいけませんよ。


 追記

  アルバムのことは特別ですので、内緒ですよ。


                  神より』


 最後の言葉はよくわからないが数年以内に会えると分かり、ニヤニヤが止まらない。

 そして、もう一つの贈り物であるアルバムを手に取る。


「あ、これは……兄さん……」


 そこにあったのは、前世での兄さんとのツーショット写真が多くあった。

 私が知らない兄さんも知ることができた。

 夜、兄さんが寝ている私にキスをしているところだったり、兄さんの満面の笑みだったり。

 本当にニヤニヤが止まらない。


 これは私の宝物になるだろう。


 そして私たちはもう一度集まった。


「それでどうでした?」

「普通に寝てた」

「私も、いつのまにか寝ちゃってた」

「私もだ」

「シオン様は?」

「ふふっ、秘密です」

「むぅ、何か知ってる顔だ」


 あれは、私にしか知らない秘密にするとしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る