リオン君の夜の話ってなんか誤解を生みそうだけど夜のお話

@rairahura

第1話

ふと目を開ける


今は真夜中 虫の音もなく静まり返り 柔らかな光を放つ月が窓から覗いている

隣にはいつものようにホヘトが

いや いつものようにじゃないか ホヘトが 眠っている

「やっとこの日が来たんだね」

ホヘトを起こさないようにそっと呟いた


ホヘトが眠りを必要としていないことは 実は知っていた

ホヘトは隠しているようだったから気づかないふりをしたけど


初めて気づいたのはいつだったっけ そうだあの日 重苦しくて息が詰まるような悪夢に苛まれていたあの日

逃げる気も起きないような場所で ふと一筋の光が差し込むのを感じた

それを頼りにどうにか暗い道を歩いて それで目を覚ましたんだった

目を覚ましてからふと隣を見ると起きているホヘトが僕の手を握っていて あまりにも握ることに一生懸命になっていたものだから 僕が起きたことにも気づいていないみたいだった

驚かせてはいけないからそのままもう一度眠って その時はもう悪夢を見なかった

その朝 ホヘトがあまりにもいつも通りだったから もしかすると毎晩そうしているんじゃないかということに思い当たった


それで ホヘトには悪いけど 何度か寝たふりをして確認した 流石に毎晩というわけにはいかなかったけど いつもホヘトは朝が来るまでずっと起きていて 大体僕が起きる少し前にそっと目を閉じるようだった


時々 一緒に眠ってみたいと思うことはあったけど 眠ったふりをしているホヘトに「朝だよ」と声をかけることが幸せだったから ホヘトが無理をしているわけではないのなら それでいいと思っていた

なぜならホヘトは僕に起こされたいと思っていてくれているからそういうことをするわけなんだから


でも最近 ホヘトが人に近づいてきていることがわかって しかもそれは ホヘトが僕らと共にあることを望むから起きていることだと知った


それから時折 眠ったふりをしてホヘトの様子を見ていた 目を開けるわけにはいかないから本当に見ているわけではないけどね

そうすると 時々 ホヘトの意識が遠のくタイミングがあることがわかった ホヘト自身は気づいていなかったようだけど


それでもしかしたら ホヘトは僕らと 僕と一緒に眠ることを望んでくれているのかもしれないと いつか本当に眠っているホヘトを起こすことができるのかもしれないと 想像するようになった


そして今日 なんとなく 今日だという予感があった




そっと体を起こしてホヘトの様子を見る やっぱりホヘトは眠っているようで 完全に力が抜けている

気持ちが込み上げてついホヘトの柔らかい頰を撫でそうになったけど ホヘトを起こしてしまってはいけないから 我慢


ホヘトは眠りながらも微笑んでいる 夢を見ているんだろうか 幸せな夢を見ていてほしいな ホヘトが幸せなら僕も幸せだから

それでもし ホヘトの夢に僕もいることができたら もっと幸せだと思う


想像してくすりと笑ってしまう おっと危ない



でもホヘトが眠るようになれば 夢を見るようになれば いつか悪夢を見てしまう日が来るんだろうか あの日僕が見たような重苦しい夢を

もしもそんな日が来たら あの日のホヘトと同じように僕もホヘトの手を握ってあげよう

僕の手が 気持ちが 少しでもホヘトの助けになるように そう あの日ホヘトが僕にくれた光のように



そんなことを考えてホヘトを見ている間に夜はさらに更けてきた 月は傾いてもう窓からは見えない

そろそろ僕も眠らないと 明日は久しぶりにホヘトとゆっくり過ごそうか 一緒に庭で日向ぼっこをするのもいいな もしホヘトがいたずらをするなら 明日くらいは怒らないでいてあげようか

でもまずは朝 ホヘトよりも先に起きないといけないな 初めて起きるホヘトに最初に「おはよう」って言うのは僕がいい


幸せな明日の予定を立てながら 僕はもう一度ホヘトの隣に横たわる


明日も良い日でありますように


「おやすみホヘト 良い夢を」

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