銀剣のステラナイツ 紫弾のオルトリヴート『黒夜に揺らぐ業火』

ゆたか@水音 豊

序章 氷花の跡

 冷え切った空気は、その象徴が息絶えた事によって徐々にその温度を上げていく。

 氷花に彩られたバーンナウトエリアが元の植物園の一角だったものへと景色を戻す。

 その気配とブライト反応の消滅を察知した一般捜査官達が此方に向かってくる足音が尚の耳に届いた。

 氷の残骸と事切れた男――紫苑と壬生だったものから広がる血溜まりの中に立つ尚と、その傍に控えるニュートン。全身に傷を負った二人の様子と場の惨状に駆け付けた者達が息を呑む。しかし彼らも、すぐに気を持ち直して自らの職務を全うすべく二人に対して声を掛ける。

 息を詰めて全てを見ていたニュートンの眼が応援隊を確認したその直後、彼は意識を失いその場に崩れ落ちた。彼もステラドレスを纏っていたから外傷自体は無い。恐らく重圧から解放され、張りつめていた精神の糸が切れたのだろう。ニュートンのフォージである女性が彼を抱き止めたのを一瞥して、彼らから距離を取った。

 駆け付けた一般捜査官達に幾つかの指示と「くたびれた。後は任せたよ」という言葉を残してその場から立ち去る。

 今しがた略式執行バーンナウトを終えたばかりの捜査官を引き止める者は、この場には誰一人存在しなかった。

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