ギフト

諸行無常

第1話 洗礼式

「ここだよな。」

「ここだ、間違いない。バケモノのような生き物が跋扈しているが間違いない。ここだ。情報は間違いなかったな。」


 上空からこの近辺を調査を行い始めて数日が経過している。

 しかし、未だ一人も見つからない。


「どうする。」

「隈無く生存者がいないか探すべきだ。既に数百年経過しているらしいし、もう手遅れかもしれないが。」


 俺達は生存者の探索を続ける。


 どれくらい調査を続けただろうか、唐突に変化が訪れた。


「熱センサーに反応。ここから北北東16キロの方角だ。」

「了解、直ちに向かう。」




 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「流れ星だ。」

「本当だ。大きな流れ星だ。」

「いや。あれは流れ星などではない。その証拠に意思を持つかのように動いているではないか。」

「長老。ではあれは、何だと思われますか。」

「あれは神だ。天より神が降臨されたのだ。間違いない。」


 神は我々の前に降臨された。

 そして、我々と同じ言葉で仰った。

 力をくれてやる。

 バケモノと戦え。

 生き残れ・・と。


 我々は神に力を授けられた。

 そして、滅びへと向かっていた人類は生き残ることができた。

 神より与えられたギフトと呼ばれる力で。





 伝承によれば、ギフトはその時、神より齎されたと言われている。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「兄貴、待ってよ。待てってばぁ。」

 もう、兄貴は自分勝手で、我儘で、人の言うことを聞かない、こうと決めれば突っ走る、私よりも二つも上であり、もう15歳で成人だと言うのに子供の頃のままだ。


「待ってやるから早くしろ。」


 それでも優しく男気があり、面倒見が良いので他人からは慕われるようだ。

 私も嫌いではない。

 私はセリン・バラミール。このバラミール領の領主の娘だ。

 ここバラミール領はこの国の北部に位置し、森に囲まれた豊かな領地だ。バラミール領は城壁で囲われその中で沢山の人々が生活している。なぜなら、城壁の外はバケモノ共が溢れているからだ。


 もう直ぐ、兄の15歳の洗礼式が王都で行われる。そこでギフトが与えられる。もし、良いギフトならバケモノと戦う為に王都にある学園に通わなければならなくなる。

 そうすれば兄貴には偶にしか会えなくなる。

 それは寂しい。


「ねぇ、兄貴。本当にバケモノ見に行くの?」

「当り前だろ。俺が見なくて誰が見る。」

「みんな見たくもないと思うよ。」

「俺は見るんだよ。俺がバケモノを殲滅してこの領地を広げるから見てろよ。いつかは自分の国をもって近隣の王になるぞ。」

「おー、意気込みだけは凄いね。」

「何が意気込みだけだ。俺は有言実行だ!」

「単にやりたい事をやってるだけでしょ。」

「兎に角、見に行くぞ。」


 ここでも兄貴のわがままが炸裂する。


 城壁の近くまで歩いているとデニズ叔父さんに出会った。父の弟だ。


「おい、アスラン。もうギフトは貰ったか?」


 アスランは兄の名前で、アスラン・バラミール。領主の嫡男で次期領主だ。

 領主になれば伯爵位を相続する事になっている。


「まだだよ、デニズ叔父さん。来月だ。先月誕生日が来たから今度の洗礼式でギフトを貰う予定だよ。早くバケモノをやっつけたいから、もう、待ちどうしくて、今からバケモノを見に行くんだぞ。」

「そうか、到頭来月か。良かったな。それから、櫓には登るなよ。危ないからな。」

「櫓に登らないとバケモノ見れないだろ。大丈夫だ。大丈夫に決まっている。」


 兄貴は、短絡的でお気楽で常に何とかなると思っている。いつもの口癖が『そうに決まっている。』だ。だから、何も考えることなく行動する。ガキだ。ガキそのものだ。

 


「ほら、何してる、セリン。早く行くぞ。」

「勝手に行けよぉ、もう。」

「妹は黙って付いて来い。」


 おー、さすが領主の息子、我儘だ。私の物も兄の物らしい。


「登るぞ。セリン。」

「登ったら危ないって、叔父さんが言ったでしょ。」

「上から見るだけだから大丈夫に決まってるだろ。」

「は。何が決まってるんだか・・」


 城壁は丸太を立てただけの簡易なもので、高さが約3メートル。一定間隔ごとに怪物撃退用に櫓が設置されている。

 登って外を見ると一面森だ。

 北の方には山が見える。

 南の方に王都はあるらしいがここからは見えない。

 私はまだ行ったことがない。


 この領地は森の中の川沿いの開けた場所にあり、街の真ん中を川が通っている。最初、この領地は狭かったらしいが森を開拓して拡大してきたらしい。


 現在、太陽が沈みかけ、西の空は茜色に染まり東から闇が迫ってきている。

 その為、森の中は暗く見え難く、周囲を見回すがバケモノらしきものは見えない。

 城壁の周囲は大人が退治しているので殆ど出ないと聞いていたが、やはりいないようだ。


「アスラン、居ないからもう帰ろうよ。出てきたら危ないでしょ。」

「出て来ないと意味がないだろ!出て来ても地面を歩くだけだから危なくないぞ。」


 ドンッ!!


 大きな音とともに丸太で作った簡易な城壁が揺れ私とアスランは櫓から城壁の外に落ちてしまった。


「痛たタタタ。」


 城壁周囲の地面は人の通行で固くなっているとは言え、城壁外であり見回りやバケモノの駆除でしか人は通らないので、落下した衝撃はそれほど大きくはなかった。

 私達は突然影に包まれた。大人が助けに来たのだろうと疑いもせずに、影の主の方向を向く。

 そこにはバケモノがいた。

 身長約2メートル。巨大な1つ目が身長の半分を占めるような丸い頭についている。

 頭の周りには髪の代わりに人の手の様なモノがが何本も生え、うねうねと動いている。

 肩の横に手はない。体中に毛が生え脚は二足歩行に適した人のような、太い太い脚がガニ股に生えていて、巨大な頭部と毛むくじゃらの胴体を支えている。


 あまりの醜悪さに恐怖が心を支配し体が動かない。


 どうにか後方に逃げようとすると、突如目の横の手が伸びアスランの肩を掴んだ。


 手がアスランの身体を引っ張る。

 アスランも抵抗するが力が強い様でバケモノの手を離すことができない。

 突如、バケモノの目の下がぱっくりと開き口になった。

 口の中は尖った歯が何列も無数に並び、食事を待ちわびる唾液が溢れ、黄色い歯にネッチョリと絡みついている。

 奥の方からは無数の赤黒い舌のような細いものがウネウネとうねりアスランを今か今かと待ちわびているようだ。


「アスラン!アスラン!誰かぁー、誰か助けてぇ。」


 私の悲痛な叫びが辺り一面に響く。

 だが、周囲に助けに応じることができる大人はいない。


「うわぁー、あー、クソぉー、この野郎!」


 アスランは叫んだ。

 頭がバケモノの口へと近づいている。

 アスランはバケモノの腕を掴んで、その手を外そう足掻いている。

 然し、子供の腕力では化物の強靭な腕力に逆らうことはできないようだ。

 私もまだほんの子供で、未だギフトも無く、ただ見ている事しかできなかった。

 化物の口がアスランの目の前に迫る。


「アスラーン!ダメェー!」


 パンッ!


 軽い破裂音とともに突如バケモノの頭が爆発した。


「大丈夫か。櫓に登ったんだろ?こいつら揺すって落とそうとするんだ。だから櫓に登っちゃ駄目だと言っただろ。」

「・・・・・」


 助けてくれたのは十数分前に会ったデニズだった。


 助かった。

 あまりのショックで声も出ない。

 ありがとうも言えなかった。


 私達はデニズに連れられ城壁の中へ戻ってくることができた。

 

「アスラン、だから言ったでしょ。」


 私はどうしてもアスランに言いたかった。


「何を言う。いい経験になったじゃないか。助かるに決まっていたんだ。」

「何が決まっていたんだか・・、クソ兄貴。」


 懲りない兄貴だ。だけど、手が震えていたのを私は見逃さなかった。いつも大きな事を言っているが恐いものは恐いらしい。



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 あの事件から数週間たち、俺は乗合馬車に揺られてこのギュリュセル王国の王都へと向かっている。

 王都まで2日の行程だ。

 領主の息子だが、無駄金は使わせないと乗合馬車に乗せられた。くそオヤジめ!

 乗合馬車には護衛が付きバケモノから守ってくれる。乗り心地は悪いが・・くそオヤジ、今度あったら殺してやる。


 まぁ、守られなくても俺は大丈夫だが・・と思ってはいたが先日のバケモノとの遭遇で本当は少し懲りた。護衛は必要だ。但し、今だけだ。見てろよ!待っていろ!ギフト。俺のギフト。絶対俺のギフトは良いギフトだ、強大でレアなギフトに決まっている。

 妹は何が決まっているんだかと常に言うが、俺は運が良い。

 だから、必ず良い方へと転ぶ。

 だから、ギフトは必ず、強大で誰も持っていないようなレアなギフトを貰えると確信している。そうに決まっている。


 馬車は途中、何度かバケモノと出くわしたものの大事なく王都へと到着した。

 バケモノと出くわした時は当然俺も漢として馬車に隠れた。当然だ、まだギフト持ってない。

 既に日はだいぶ傾き時間は夕方くらいだろう。

 王都は10メートルはあろうかと思えるほど高い石でできた城壁で囲まれていて、外敵とバケモノの侵入を阻んでいる。

 門で衛兵の審査を受ける。

 俺は伯爵の息子だとの身分証を出すと衛兵は慇懃な対応で俺を通す。ま、当然だ。


 門を潜り王都へ入ると街は人で溢れている。

 王都は田舎とは違い様々な店が立ち並び、どの店にも田舎では販売していないような品が所狭しと並んでいる。


「宿をお探しですか。」


 見た目田舎者に見えるからだろうか。同じ年齢くらいの女の子が話しかけてきた。


「あー、探している。料理が美味くて風呂付の宿を探している。」

「だったら、うちのラーメンという料理は絶品ですよ。豚の骨をコツコツ煮込んで出汁をとっています。骨だけにコツコツ・・って、お客さん、そんな目で見ないでェ。」


 何か訳の分からない事を言って女が一人で騒いでいる。

 ガキか。

 これが、巨乳の美女なら喜んで女の宿へと行くのだが。


「すまないが、他を探す。」

「えー、そんなこと言わずに。うちには風呂もあるし女将は若くて美人ですよ。しかも巨乳。」

「どこだ。」

「え?」

「行くから場所は何処だと聞いている。」

「じゃあ、付いて来て下さい。一泊料理付きで5000ディンです。料理には若鶏を油で揚げたカラーゲという料理が付いてます。ニンニクとショーユで味をつけてますよ。胡椒が効いてとても美味しいですよ。」

「本当か?本当なんだな。本当に女将は巨乳なんだろうな?」

「い、今料理の話をしてたんですが・・」


 宿へ着くと中々きれいで高級な貴族が宿泊するような宿だ。


「部屋は二階です。鍵はこのキーですね。無くさないように。直ぐご飯になさいますか?」

「おう、荷物を置いて来るから直ぐに飯にしろよ。」


 部屋に入るとワンルームの六畳ほどの部屋だ。灯りが点いている。これは魔法だろうか。

 ギフトが当たりで魔法も使える様になるに決まってるから、俺にも使える様になるだろう。


 一階へ降り食堂へ行き席に着く。

 周りを見回すと既に夕方も過ぎ、だいぶ席が埋まっている。

 兵士だと思われるごつい男たち。

 きれいな若い女性たち。

 商談をしている商人達。

 いろいろな人が宿泊しているようだ。


 そうこうするうちにご飯が出てきた。


 ご飯はお米とカラーゲと言われていた鶏を揚げたやつだろう、茶色く油でつやつやで香ばしいニンニクの香りが漂っている。

 お米は住んでいるバラミール領でも作っているから珍しくはないがこのカラーゲは初めて食べた。

 美味しい。ニンニクの香りとショーユの香ばしさと香辛料の辛さが食欲をそそる。

 

 王都に住めばこれが毎日食べられる。

 よし、


「王都の住人に俺はなる!」


 食堂で思いっきり宣言したら周りの客が引いている。隣で料理を持って来た先程の客引き女子も引いている。

 引かば引けだ。燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんやだ。

 

 通常、ギフト次第で王立学園に入学することができるが、一定以上のギフトの能力が必要だ。

 中でも、強大なギフトを授かる人は稀だ。ギフトの種類は多岐にわたるが普通は、魔物一匹と戦える程度のギフトを授かることになる。

 然し、もしも、強大なギフトやレアなギフトを授かれば、学費も生活費も国で補助してくれる。

 俺は良いギフトを授かることに決まっているから、当然授業料免除で生活費も国が支払ってくれることに決まっている。

 まぁ、俺は領主の息子だから金には困ってないが。


「わぁーっはっはっはぁ。」


 突然笑い始めた俺を見た周りの客が更に引いている。

 まぁ、その内、王になった俺を崇め奉る事になるんだから今だけだ。良かったな、お前ら未来の王を間近に見れて。


 ご飯を食べ終わったので部屋へ帰ってすぐに寝る。

 いや眠れない。

 当然凄いギフトを貰えるに決まっているのだが、どんな凄いギフトがもらえるのかと興奮して眠れない。

 牛をも引き裂ける力のギフトは基本として、剣が上手くなるギフトだろうか。いや、いや、それに加え魔法が使えるギフトだろう。

 そんな魔法が使えるギフトを貰った人間は少ない。

 ほとんどの人間が肉体強化のギフトだけだ。

 それに加えて色々なスキルが付加されるらしい。

 いや、俺は想像だにし得ないギフトが貰えるだろう。そうに決まっている。



 目が覚めた。

 目を開けると窓から朝日が漏れ部屋の中が少し明るい。

 今日は待ちに待った洗礼式だ。

 洗礼式という名前だが宗教的な意味合いはないらしい。


 朝食を食べに一階に降りる。

 朝早いが既にかなりの人が朝食を食べていた。

 席について配膳を待っていると前の席で同じ年位の女性が朝食を食べている。

 綺麗な女の子で前の席に屈強な護衛と思われる男性が座っていた。

 護衛が付いていて、上等な服を着ていることから貴族だろうことは伺える。同年代の女性は王城での舞踏会等であったことがあるのだが彼女の記憶はない。


 朝食が配膳されたので食べ始める。

 魚と卵を焼いたもの。そして、ミソシールというスープが付いていた。

 普通に食べれる。

 それほど美味しくはないがまぁ、美味しい方だろう。


 ふと前を見ると先程の女性と目が合った。

 微笑まれて会釈された。

 おっ、俺に惚れたか?笑顔で会釈し返した。

 でも、本気で惚れられたとは思わない。なぜなら、本当に惚れられていた例がない。何度勘違いしたことか。

 笑顔が素敵なきれいな女性だった。

 序に胸もデカかった。


 王城に隣接されている教会でギフト授与式は行われる。

 半年一回だけなのでかなりの人数が列を作って並んでいる。

 どうやら、来るのが遅かったせいか一番最後だ。

 くそぉー、誰のせいだ。

 あの巨乳の所為だな。そうに決まっている。

 

「あっ!」


「あっ!」


 朝食の時前の席に座っていた女性が隣に並んだ。そりゃそうだ、僕は彼女を見ていたから最後尾になったのだから、彼女も当然最後尾だろう。


「君も今日洗礼式なのか?」

「そう。あなたもなのね。田舎から出て来たお上りさんみたいだったから直ぐ分かったわ」


 し、失礼な・・何だ、この上から女。

 ベッドの上でも上からだと嬉しいのだが・・

 下から見上げる巨乳は最高だろうな、そうに決まっている。

 まだ、童貞だから分からないが、イメージトレーニングはばっちりだ。


「これはだいぶ待つ事になりそうだな。」

「そうね。多分、夕方には終ると思うけど。」

「俺はアスラン・バラミール。バラミール領から来たんだ。」

「え?領主の息子さんか親戚の人?」

「そうだ、バラミール伯爵の嫡男だ。」

「私はアラナイ・メネメンジオウル。この王都に住んでるの。」

「ほう。俺も、王都に住んで学園に通う予定だ。勿論授業料免除だ。」

「それは、良いギフトを授からないと駄目なんじゃないの?」

「いや、俺は良いギフトを授かるに決まっているんだ。」

「そ、そうなんだ。」

「ん?何だ、その可哀そうな人を見るような憐れみの眼は。」

「いえ、可哀そうだなぁーと思って。」

「誰がだ!」


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 はぁー、まさかこんな田舎に配属されるなんて。まいった。ついてないよ。


「なんか言ったか?付いて来いよ。」

「はい先輩。」


 もうやる気ゼロだよ。早く戻りたいよ。


「今日、洗礼式という名のギフト授与式だ。知ってるだろ?」

「はい、ギフトを与えるんですよね。」

「そうだ。洗礼式の様式を用いてはいるが、その実、マシーンを脳に埋め込む手術だ。お祈りをしている間に意識を奪い隣の部屋へ転送して手術を行う。」

「医者が来るんですか?」

「ロボットが行う。ダビンチ23号だ。脳にマシーンを埋め込むだけの簡単な手術だ。もちろんオペはダビンチがするから間違いはない。しかし、その準備、特に材料の用意は人間の仕事だから気を引き締めてやれよ。倉庫に置いてる青い箱が今日用意するギフトだからな。まぁ、ギフトはマシーンだと言っても金属は使ってないけどな。」

「了解しました。青い箱がマシーン、つまりギフトですね。」

「そうだ。中はタンパク質で作ったマシーンだ。だから、持ち運びには気を付けろよ。特にお前はそそっかしそうだからな。」

「失礼ですね、先輩。僕はそそっかしくないですよ。安心してくださいよ。」

「まぁ、午前中は俺も手伝うからな。」



 ・・・・数時間後・・・・


 やっと、やっとだよ。やっと終わったよ。もうやだよ。やっとお昼ごはんだよ。


「じゃあ、俺は別の現場に行くから。後は任せたぞ。」

「はい、安心してください。大船に乗ったつもりで。」

「乗っているのは大船か泥舟かわからないけどな。」

「えー、先輩は狸には見えないから安心してくださいよ。」

「だれが、カチカチ山の狸だ。」


 午後の作業を開始して残りも僅かとなった。

 あ、ギフトが切れた!残り三人か。でも取りに行かないとな。やだなぁ、急いでいこう。

 倉庫へやって来た。倉庫は明るく光に溢れ全体が白で統一された清潔感溢れる研究所のように造られている。

 残りは・・・え?全部ない?品切れか?どうしよう。発注してすぐ来るかな、めんどくさぁ〰。

 いや、まだ奥の方に三本発見!

 色が薄いけど、日に焼けてるのか?もしかしたら古いのか?

 消費期限は・・・っと大丈夫だな。

 じゃ、目が疲れて薄く見えているだけだな、まぁ面倒臭いからこれでいいか。あー、面倒臭い。


「次の人どうぞ。」



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「アラナイ、疲れてないか?顔が険しいぞ。」

「もう、疲れた。いつまで待たせるのかしら。」


  話しているともう女性が執事らしき人物を引き連れて胸を揺らしながらやって来る。

  おっと、こっちも美人だ、しかも巨乳。しかし、豪華な衣装だな、王族か?


「姫、こちらへお並びください。」


 姫?この人はお姫様なのか。やはり王族か。


「あなた達が最後なのですか。」


 姫と呼ばれて綺麗な女性は空色の瞳で俺を真っ直ぐ見つめながら透き通るような声で問い掛けてきた。


「はい。この二人が最後です。」

「あ!あなた、以前舞踏会でお会いした、確か、アスラン。そうアスラン・バラミール様。」

「はい。あー思い出した。確か以前王城での舞踏会で。一緒に踊りましたね。確かレイラ姫。以前とは違い成長されたようで分かりませんでした。特に胸の辺りが・・ウ”ッウ”ッ、いえ、綺麗にお成りでしたので。」咳込んで本音を打ち消した。


 そうだ、彼女の名前はレイラ・ギュリュセル。このギュリュセル王国の第三王女だ。


「姫に失礼ですぞ。アスラン様。」

「良いのじゃ、爺。アスラン、ありがとう。それで、なぜ、アラナイがいるのですか。」

「え?アラナイをご存知なのですか。」

「えー、勿論です。妹ですから。」


 妹?


「準備ができました。次の方お入りください。」


 やっと俺の順番が来た。

 この後、姉妹で何か話すのだろうか?双子には見えないから、アラナイは庶子だろうとの察しは着く。

 面白い話が聞けそうだったのに残念だ。


「では、お祈りしてください。」

「はい。」


 俺は祈った。

 良いギフトをくれと。

 まぁ、祈らなくても良いギフトが貰えると決まっている。


 ――――――――――――

 ――――――んー、何だ、寝てたのか?


 気が付くと横になっていた。


 そこは簡易ベッドが沢山置いてある場所だった。周りを見回すと、他はアラナイと姫がいるだけだった。姫の横では執事が姫が目覚めるのを待っているのだろう。


 数分後、アラナイが目覚めたが僕と同様に朦朧としているようだ。

 姫はまだ目覚めない。


「可怪しいですね。意識が朦朧としている人は沢山いましたが直ぐに目覚めていました。ここまで長く寝ている人は三人だけです。」


 執事は長く目覚めなかったことを疑問に思ったようだ。


「すいません。寝坊助なんです。」

「姫もなんですよ。」


「「アーハッハッハ」」


 執事さんと大笑いした。疑惑はどこかへ飛んでいった。


 そうこうしている内に姫も目覚め王城へと帰っていった。

 僕はアラナイと二人で他愛もない話をしながら宿へと歩いた。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「どうだ、失敗しなかったか。」

「当然ですよ先輩。」

「本当だろうな。」


 疑い深い先輩はそう言うと倉庫へ調べに行ってしまった。


「おい!薄い水色やつ無かったか?」


 何だ、先輩、なんだか焦ってるぞ。


「あー、ありましたよ。青がなくなったので消費期限を確かめて使いましたよ。同じ物でしょ。」

「青と空色は違うだろ。あれほど青だと言っただろ。何本使った?」

「箱が日光で青が薄くなっただけですよ。そんな大げさな。」

「何言ってるんだ。だから何本使ったんだ。」

「三本ですよ。」

「何人に?」

「三人ですけど。」

「あれは、一本で10人分だぞ。しかもギフトではないぞ。」

「えっ、あれは何なんですか。」

「あれはな・・・・」


 えっ、あれってなんなの?


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