第550話 【過去】

 《洞窟》


 「ただいまですぞ!蜘蛛蛇」


 「フシュルルル」


 洞窟に帰り着くとお留守番をしていた蜘蛛蛇が迎えてくれる。

 本来、蜘蛛蛇は洞窟に巣を作って獲物を待ち伏せする魔物なのだが、この親子は共存していた。


 「フシュルルル」


 「え?何か良いことがあったかって?えへへ実はですぞ」


 蜘蛛蛇に買ってきた肉を見せた。


 「フシュルルル」


 「だめですぞ!これは料理してから3人で食べるですぞ」


 「フシュルルル」


 ムラサメ親子には蜘蛛蛇が何を言っているか理解している、これが共存出来る大きな理由なのかもしれない。


 「フフッ、2人ともお母さんは料理の準備をするから山から湧き水を取ってきて?」


 「はいですぞ!行きますぞー!」


 「フシュルルル」


 2人は洞窟を元気よく出ていった。


 「……さて、と」


 母親は手作りの竈門で料理をしようとボロボロの魔皮紙に魔力を流すが……


 「あれ?つかないわね」


 何度も何度も魔力を通すがつかない。


 【火を付けるのをお困りで?】


 「!?」


 後ろから聞こえる“綺麗な女性の声”に振り返ると


 【ずっとスタンバイしてました、どうも】


 そこには声と引けを取らない程美しく、可愛く、綺麗な女性がいた。



 彼女は涙を枯らした充血した目で1つの質問をした。




 【自分の子供は好きですか?】


 

 

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