第549話 ムラサメの過去

 《??年前 アバレー王国》


 小さな冒険者ギルドから出てきた仮面をつけた親子2人。


 「お母様!やりましたですぞね!ギルドに【衰地鶏】が高く買い取ってもらえたですぞ!」


 「えぇ、お祝いよ、今日はムラサメちゃんの好きなものを買ってあげる」


 「本当ですぞ!?じゃ、じゃぁ私は【大蛇万】のお肉が欲しいですぞ!」


 「フフッ良いわよ」


 ムラサメとその母親は早くに父を亡くし、貧乏で山の洞窟に住んでいて、彼等の収入源は洞窟に時々来る小さな魔物を罠にかけてそれを売る事だった。


 ちなみに【衰地鶏】はあまり美味しくなくギルドにも低い値段で取引されるのだが、今回はたまたま品質が良かったのが居たのだ。


 と言っても、雀の涙ほどだが……


 そして、今日は村へ買い出しの日__


 「____」


 「____」


 村人達は親子を見てヒソヒソと話し始める。


 「来た来た、女神の親子よ」


 「いやぁねぇ、ここからでも臭うわ……臭いわねぇ」

 

 「それに何あれ、なんで仮面つけてるのかしら?不気味ねぇ」


 「今日は帰ろうかしら、あの親子が見たら気分が悪くなって来たわ」


 「私も、帰りましょ」


 次々と家に帰って行く獣人達。


 「……」


 「……」


 「お母様__」


 「行こっか、ムラサメちゃん」


 「はい……」


 2人は目的のお肉屋さんまで来た。


 「いらっしゃ____ちっ、なんだアンタらか」


 「はい……あの今日も干し肉と……後、【大蛇万】のお肉を100グラムだけ……」


 「ほう?大蛇万の?おめーさんにしちゃ珍しいな」


 「少し、多くもらえたので……」


 「ふん、100グラム600ってとこだ」


 「え!?」


 評価には大蛇万の肉は100グラム200と書いてある。

 3倍の値段だ。


 ちなみに【大蛇万】の肉も美味しいものでもなく、よく家畜の魔物の餌に混ぜられることが多い肉だが、彼等にとっては贅沢な品だった。


 「あ、あの値段が」


 「勘弁してくれ、アンタがウチで肉を買って行くからこっちは客がどんどん減ってきてるんだ、「女神に肉を売ってる店」ってな、言わんとする事は分かるだろ?」


 「そ、そんな……」


 「もう一生、うちの肉を買いに来ないなら普通の値段で売ってやる」


 「…………はい」


 「よし、ほらよ、二度ともう来るなよ」


 元々そのつもりだったのか用意していた肉を母親にあげてギルドカードで精算する。


 「お母様……」


 「行くよ、ムラサメちゃん」






 2人は大量の安い干し肉と大蛇万の肉100グラムの袋を持って洞窟へ帰っていった……


 






 

 

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