第530話 圧倒的強さ


 なんだ……コイツは……

 少し攻撃を食らっただけで解る。

 でたらめな強さだ。


 「く……」


 自分の身体を回復させ立ち上がり、もう一度【分析】で目の前の人間を見る。


 「どう言う事なんだ……」


 【LV2】……つまり、コイツは今まで魔族どころか魔物すら殺していないと言う事になる。

 

 あり得ない、我の魔眼がおかしいのか?否、他の勇者には機能していた。

 あのヒロユキと言う勇者でさえ魔力がない状態から動けたのは秀でた精神力という事で説明はつく。


 だが、目の前のこの女は明らかに異常だ、HPや魔力量などは普通の人間よりも無いくらい酷い数値。


 そんな奴が我に素手だけでダメージを与えただと!?


 「まだやるの?」


 「我は魔神だ……こんな、こんなことがあってたまるか!」


 気がつけば全力で魔法を使って目の前の異端者を排除しようとしていた。


 この苛立ちはなんだ……


 「死ね!死ね死ね死ね!」


 「ほんと!この世界の人達って命をなんだと思ってるの!」


 何故だ!なぜ当たらん!


 「【燃えろ】!【凍れ】!【レーザー】!【吹き飛べ】!【弾けろ】!」


 「うるさい!歯食いしばれ!」


 「ンガゴ!」


 なんだ……と……

 全て避けられいつの間にか殴られる。

 何をしても勝てるビジョンが浮かばない、攻撃手段は何千通りもあるが全てが効果ないように感じてしまう。

 回復再生するのでダメージを受ける分には関係ない。

 

 だが、そんな事ではない。


 「君が!泣くまで!殴るのをやめない!」


 勝てない。


 この世界を統べる我の力でさえ、コイツには勝てない。


 この感覚……あぁ……苛立ちは……そう言うことか……


 「…………」


 「お縄につけ!はちょっと違うか」


 認めたくなかったのだ。


 “あの人”以外に勇者を____







 「お前の勝ちだ」





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