第525話 最終兵器

 《魔神城》


 「これが、お前が見せたかったものか?」


 「……」


 映像に映し出されたのは絶望的状況を打破する人達。

 魔神はリュウト達に絶望を与える為に見せたはずが、それを覆したのだ。


 「認めよう、これは我の誤算だった……ここまで人間がやるとはな」


 「ようやく、お前の鼻をへし折れたな」


 「フッ、確かにそうだな、だが状況は変わらないぞ?」


 「いーや、変わったさ」


 「ほう?」


 「みんなが限界を超えて戦って俺達の背中を押してくれている、その期待に答える!」


 リュウトはランスを構え、魔神に向ける。


 「さぁ、続きをしようぜ!」


 「フン……お前達を倒してその首をアイツらの前に出してやるか」


 「上等!行くぞヒロユキ!」


 「…………」


 ヒロユキは大量の冷や汗をかいていた。


 「ヒロユキ!」

 

 だが、リュウトはそちらを見る余裕はない。


 「……あぁ」


 リュウトはその場で踏み込み一気に魔神に詰めた!


 「馬鹿の一つ覚えだな」


 「おらぁ!」


 「我には効かないとあれほど__何!?」


 同じように止めようとした瞬間、リュウトは突くのをやめてランスをバットの様に持って魔神を横から吹っ飛ばした。


 「くっ!」


 予想以上に吹き飛んで行く魔神。


 「ヒロユキ!」


 「……」


 魔神の吹き飛びは直角に方向を変えてヒロユキの方へ向かっていき。


 「……斬!」


 そのままヒロユキは日本刀で魔神を真っ二つにした。


 だが、新しい魔神がまた現れる。


 「何度やっても無駄だと言うのが分からんようだな」


 「何度でもやるさ!お前が諦めるまでな!」


 「先程の我に対しての攻撃、格段にパワーもスピードも上がっている……口だけではないのは認めよう、だが」


 「っ!?」


 リュウトは魔神に一瞬で間合いをつめられ首を取られる。


 「それだけか?」


 「ぐ、ぁ……な、何を言って……」


 「あれだけの素材が揃ってそれだけしか成長しないのかと言っているのだ!」


 「……はぁあ!」


 「邪魔だ!」


 助けに入ろうとしたヒロユキに向かってリュウトを投げる。


 「っ!」


 受け止めようとしたヒロユキはそのままリュウトと一緒に飛ばされた。


 「くっそ!何言ってるんだアイツは!」


 「……リュウト」


 ヒロユキは目で合図を送った、そろそろ頃合いだと。


 「わかった」


 合図を受け取ったリュウトは立って真正面からゆっくりと魔神に歩き出す。

 

 「よく分からないけど、俺の限界をみたいなら見せてやるよ」


 リュウトの周りの空気が変わる。

 

 「……」


 「【限界突破】」


 途端、部屋の中の圧力が変わったのかと錯覚するほど全身を押さえつけられるような重圧がみんなにかかる。

 だが、魔神は……それこそつまらなさそうに呟いた……


 「最後はそれか……やはり……」


 言い終わる前に戦闘が始まる。


 「ほら!これが俺の限界だ!」


 ランスを突き、振り回し、次々と素早く攻撃していく。

 

 「黙れ!それは魔法によって出た物理的な限界だ!」


 「さっきから何言ってんだ!よ!」

 

 「ちっ!」


 流石に勇者の限界突破を相手をするのは魔神からしても厄介そうだ。

 裏を返せば、【限界突破】を使っているのに“厄介”で片付けられる程の強さの相手なのだが……


 「おらおらおらおらぁ!」


 リュウトは余計なことを一切考えずに魔神を攻撃する。


 「気合だけでどうにかなる相手だと思うな」


 「が、はっ」


 攻撃を見切って出した魔神の拳がリュウトの腹に直撃する。


 「苦しがってる暇はないぞ【燃えろ】」


 「ぐ、あぁぁぁぁあ!」


 そのまま殴られた箇所から魔法陣が発生してリュウトの身体を青白い炎が包み込む。


 「破片も残らず消滅するがいい」


 リュウトの装備の許容熱量を遥かに超えている炎攻撃により備わっていた魔法陣が壊れていく。


 「あぁぁぁ!ぐ、がぁぁぁあ!ま、まだまだぁ!」


 「ほう?まだ動くか、しぶとさだけは褒めてやろう……【凍れ】」


 「っ!?あ、足が!うわ、うわぁぁぁあ!」


 魔神の魔法でリュウトは足から凍っていき……


 「……」


 最後は動かなくなった。


 「……リュウト!」


 「【止まれ】」


 「……くっ!」


 ヒロユキの下に魔法陣が展開され身動きが取れなくなる。


 「こいつを始末した後ゆっくりとお前を倒してやる」


 魔神は凍っているリュウトの方を向く。


 「お前如きが【勇者】を名乗るなど片腹痛いわ、これ以上恥辱を晒す前に我がトドメを刺してやろう」


 そう言うと魔神の横に身の丈大の巨大な全く飾り気のない頑強な片刃の大剣が姿を現す。


 「これはお前達偽物の勇者と違い、真の勇者が愛用していた剣だ、貴様の最後にふさわしいだろ?」


 「……リュウト」


 「さようならだ、偽の勇者」


 魔神が大剣を真上に構えた時、ヒロユキは叫んだ。









 「今だ!リュウト!」









 瞬間、リュウトは動き出す!



 「何!?」


 「はぁぁぁぁぁあ!」


 リュウトのランスは魔神の胸を捉え____“魔神の禍々しい鎧を砕いた”




 そして、リュウトも叫ぶ。




 この場に最初からいて、ヒロユキの幻覚でずっと隠されていた最終兵器に____




 「いけええええええぇ!みやぁぁぁあ!」







 その言葉と同時に魔神の剥き出しになった胸に紫色の小さな針が撃ち込まれた。








 

 

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る