第519話 魔王の力!

 

 「ほう……」


 魔神は一度2人から距離をとる。


 「今だ!ランス!」


 その隙を見逃さずリュウトはランスを手元に戻す。


 「なるほど、世界の理に干渉する力……魔王の力か」


 魔神の切れた腕は再生される。


 「ヒロユキ!もういっかい行くぞ!」


 「……あぁ」


 その掛け声と共にヒロユキは姿を消し、リュウトはランスを構えてまっすぐ魔神に突っ込んでいく。


 「はぁぁぁぁぁあ!」


 「……」


 ランスを高速で突いて来るのを魔神は見切って右に左に避けていく。

 

 「どうしたんだ!避けるだけじゃダメだと言ったのはそっちだぞ!」


 「そうだが?」


 「はん!この状況も解ってないのか?」


 リュウトは攻撃をやめない。

 だが、魔神は全て見透かしている様に余裕を持って避けながら応える。


 「状況?それはどれだ?貴様が自分を囮にして幻覚で隠れている仲間が我の隙を攻撃する事か?それとも貴様が我に攻撃をしていると勘違いしている事か?」


 魔神は再生した装備が装着されていない方の腕の指2本でリュウトのランスを止めた。


 「なっ!?」


 「貴様の武器はランス、突く時に何も拒めない……だがその判定は1番先の部分が触れた時に発動する、つまりこの様に止めればそこら辺の武器と何も変わらない」


 「ちっ!」


 ランスを力づくで引っこ抜こうとするがまったく微動だにしない。


 「貴様の武器は相手が大きければ大きいと対処しづらいだろうが、対象が小さければ小さいほど倒すのが難しくなってくる」


 そのままリュウトをランスごと蹴り飛ばす魔神。


 「ぐぁっ!」


 「そして、隠れていても我が隙を見せなければ出てこれない、ほら、状況を説明してやったぞ」


 「はは……こりゃ困ったな……全部お見通しってわけか!」


 ランスをリュウトはその場から魔神に向かって投げ、自らも突撃する。


 「今度は何を見せてくれる?」


 スッと飛ばされたランスを避けるとランスはそのまま支柱を貫通しながら飛んでいきランスの後にリュウトが来る。


 「はぁぁぁあ!」


 リュウトの目に【キャンサーの紋章】が浮かび上がり手が鋏に変化し、魔神の腰を挟んだ。


 「……」


 「どこまで余裕が持つかな!」


 リュウトは鋏に力を込めるが……


 「っ!」


 「キャンサーの能力は防御力にある、貴様如きの力では我は潰れんぞ?」


 「あぁ、その様だな……だけどこれで動きは止まった!」


 リュウトの片目に【サジタリウスの紋章】が浮かび上がると


 「……!」


 手を離れたランスが方向を変えリュウトの背中から迫ってきた!


 「お前を倒せるのはこの武器だけなんだよな!」


 「これではお前も死ぬが?」


 「魔神を倒せるなら本望だ!」


 ランスはリュウトの背中から魔神ごと貫いた。

 

 「……」


 「……」


 「ガハッ……」


 貫かれた魔神の胸には大きな風穴が……そして、同じく貫通されたリュウトの身体は水になってまた再構築された。


 【ピスケスの紋章】の力__大量の魔力と引き換えに自分の身体を液体にできるのだ、リュウトはランスが自分を貫く瞬間、それを発動させたのだ。


 「はぁ……はぁ……ヒロユキ!」


 「……任せろ」


 すかさず幻覚から出てきたヒロユキは日本刀で魔神をブロック状になるまで細切れにしていく。


 「…………」


 「…………」


 「終わった……か?」


 2人の目の前には血の溜まりが……


 「……手応えはあった……だが」


 「あぁ、なんだ、この胸騒ぎは」


 


 2人の悪い予感は当たっていた。




 「____ほう、気付いたか」




 「「!!」」


 

 1つの支柱の裏から出てきたのは先程倒したはずの魔神だった。






 「良い顔だ、お前達にもっと絶望を与えてやろう」







  

 


 

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