第503話 浦島太郎
《ナルノ海岸 ヒロユキパーティーテント》
「はむ、あむ」
お皿の上に魔皮紙を置いて転送されて山盛りの『黒髑髏薔薇』をものすごい勢いで食べていくユキナをヒロユキは見ていた。
「……すごい食欲だな」
「うまうま」
ユキナはここについて実に4時間、ずーーーーっと食べていた……そして、準備を終えたジュンパクがテントに入ってくる。
「アニキ、ジュンパク団は全員集まったよ……ってまだ食ってたの?」
「うまうま」
「そろそろ何を隠し持ってるかミー達に言わないの?」
「ここまで来る、驚かす」
「おぉ、ハードルを高くするね、それにしても言われた通り船の準備もしてないけどいいの?」
「問題ない」
「ふーん?」
ジュンパクは少し不満そうだ。
「……ジュンパク」
「なぁに、アニキ♪」
「……これが人間と魔族の最後の決戦になる、覚悟はいいか?」
「フフッ、アニキにしては珍しいね」
「……」
ジュンパクはそう言うとヒロユキをまっすぐ見る。
「アニキ、前にも話したけど海賊は自由なんだ」
「……うむ」
「寝るのも飯を食うのも娯楽も……死ぬ時も明日死ぬかもしれないから全力で今を生きてる」
「……」
「何でも自由って事は逆に言うとルールを決めるのは自分なんだ、アニキとユキ姉貴に命を救われたあの日からミーの命は2人のために使うって決めた」
「……」
「だから、ミーを自由に使ってね、アニキ……もちろん、エッチな事にも使って良いよ♪」
「……フッ、ユキにまた小言を言われるぞ」
「姉貴はいないからいいの〜♪」
2人の会話を聞いていて一瞬手を止めてユキナは少し呟いた。
「自由……」
それだけ言うとまた食べ始める。
「……」
ヒロユキはユキナが何か隠しているのは気付いている、だがそれは話せない事だと言う事も理解していた。
「それで、ユキナ?そろそろ時間だけど」
「了解」
最後に飲み込むと口を拭いて立ち上がりヒロユキとジュンパクに言う。
「外、出る」
「待ってました♪ミーの船よりすごいもの、期待してるよ!」
「……行こう」
3人はテントを出る。
外は晴れていて月明かりが良く、星もかなり見えていた。
「リーダー、行ってくる」
「……あぁ」
ユキナはそう言うと海の中に泳いで行った。
「アニキ、あれからユキナってすぐにここに到着した後、ずっと黒髑髏薔薇を食べてただけだよね?」
「……あぁ」
「ヒロユキ、ここに居たのか」
「……リュウト」
「ジュンパクさんも」
「よっ、他のみんなも久しぶりだね」
リュウトのパーティーも合流する。
パーティーの中にはユキとみやも居た。
「あんたも相変わらずね」
「ババアは歳とったね」
「フフッ、今回の戦いで後ろから攻撃が来ても文句ないわね?」
アンナとジュンパクは相変わらずで
「ヒロユキさーん!」
「……ユキ、来たのか」
小さなユキはヒロユキを見つけるなり抱きつく。
「来ましたです!ヒロユキさんのヒロインですよ!」
「……そんな言葉どこで覚えた」
「秘密です♪」
ユキはウィンクをみやにして、みやもウィンク仕返す。
「ヒロユキ、見た感じ船も何もないが本当に準備できてるのか?」
「……たぶん」
「えぇ!?」
「どうするんだ?結構な規模だぞ?」
「……」
「まぁまぁリュウトの坊主、ミー達、というかユキナに任しときなよ」
「ジュンパクさん……」
「ちなみにミー達にも何が起こるか分かんないけど」
「本当に何が起こるんだ……」
リュウトは少し心配しつつもヒロユキ達が見ている海の方を見る。
「ん?」
「どうした?あーたん」
最初の異変に気付いたのはあーたん、彼女はウサギ耳をピクピクさせて、音を聞いている。
「わかんない、でも何だろ?水の中から変な音が聞こえるよ?」
「水の中?」
「アニキ!」
「……あぁ、楽しみだ」
______そして、時が来た。
海が盛り上がり、巨大な甲羅が姿を現したのだ。
そして、その甲羅をリュウトやヒロユキ達はよく知っていた……
「え!?リュウトさん……あれって……」
「まさか……嘘だろ……」
信じられないと言う顔をしながら驚くリュウトとアカネ。
「私、夢でも見てるのかしら」
「いや、ババア……夢じゃないよ、これは」
余裕を見せてるがしっかりと頬には冷や汗が出てるアンナとジュンパク。
「……」
黙っているみや。
みんなが驚くその正体は____
「……山亀」
もう一つの『天災』が、姿を現した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます