第496話 魔神を目指す理由

 《六英雄 拠点》


 「{トミーさん、エス、今すぐ戦闘をやめて}」


 {{了解}}


 「{うお、相変わらず言えばすぐ従ってくれるのね}」


 2人からの返事を聞いて通信を切ってウジーザスさんの方を見るがあっちはどうやら何か話してるみたいだ。


 うん、普通そうだよね、理由聞くよね。


 「あのー……」


 「少し待っててくださいね、此方で話すことがあるので」


 「あ、はい」


 そういってウジーザスさんは通信しながら聞かれたく無いのか俺に背中を向けて部屋の奥に歩いていく。


 



 どうしてこうなってるか?それは今からほんの20分前の出来事だ。







 〜20分前〜



 「ようこそ、アオイさん」


 「……」


 俺は印を頼りに六英雄の拠点に転移して来た。

 入り方は外に紋章が書かれている大きな石扉があって手の紋章を光らせるとここまで転移してくる仕組みだった。


 「『神速』を使わないのは良い判断ですね」


 「こっちは戦いたくないから、それを行動で表しただけだよ」


 「他の選択肢をすると死ぬのはわかってました?」


 「うん……正直、どんなに考えてもその力に勝てる気がしなかったよ、だから白旗あげながら来るしかなかった」


 「そうですか……あなたは一度私を倒してるんですけどね……」


 「え?」


 「気にしないでください、さ、話をしに来たのでしょう?案内します」


 そう言って大きなモニター、6個の椅子と広い机がある部屋に案内された。


 「ここは……?」


 「六英雄の集合場所です、今のアナタにもその椅子に座る権利はありますよ」


 「あ、はは、では失礼します」


 座ると椅子は少し温もりがあった……あれ?誰か座ってたのかな?


 「……親子ですね」


 「親子?」


 俺の言葉は無視してウジーザスさんは話し始める。


 「それで、あの時言いかけていた話とは何ですか?」


 言いかけていた?あぁ、確か少し前に協力して残り2人の勇者を倒そうって持ちかけられた時、俺が断ったらレナノスさんが襲ってきた時か。


 「僕の話を聞いてほしい」


 「聞きましょう」


 「ウジーザスさんのメッセージは見ました、その映像には僕やヒロユキくん、リュウトくんの勇者が魔族を殺している映像」


 ちなみに俺は殺してないぞ?気絶させていってただけだったが、気絶して倒れた魔族は踏まれたり殺人トルネードに巻き込まれていたりしたから同罪なんだろうけど……そもそも死体だったとしても仲間を踏む方がおかしいっての!そもそも殺人トルネードで仲間を巻き込むって考えが意味わからん!


 おっと……こんな事言い出したらキリがないので言うのはやめておこう。


 「アナタはあの映像を見て何も思わなかったんですか?」


 「いえ……正直、僕も見ていて怒りを覚えました……だけど、あの映像は“魔族からの視点”でしか映っていない」


 「……」


 「まずそこがおかしいと思うんです」


 「一方的に殺される魔族の方が悪いと?」


 「その考えがおかしいって言ってるんです、確かに何も知らないで根っから魔族を悪と決めつけて戦っていたのは謝りますが、魔族の方も人間にそう思われるような事をしていた」


 「では、人間に周知しろと言うのですか?「お前達は家畜だ」と「生贄だ」と?」


 「それは……」


 「そんな事をすれば人間と魔族の戦争になります」


 「でも、結果はこれですよね、戦争をするより被害が出ている」


 「それは結果論です、勇者を召喚しなければこうならなかった」


 「……」


 「アナタ達、勇者が全ての元凶」


 こっちも呼んだくれ!って頼んだわけじゃないんだよ!って決まり文句なんて言わない。

  

 みんな覚えててそのセリフを言う主人公ってザ・主人公の性格してるから。


 だから俺はこう言うのさ!


 「まぁ……色々話したけど、こうなった以上仕方ないよね」


 「!?」


 「過去の事を話すのはもうやめましょうよ……なんか失敗した後その失敗したことしか責めないダメダメのクソ上司みたい」


 「何を言ってるんですか?」


 「未来を視る事が出来るのに過去をどうこう言っても仕方ないって言ってるの!」


 あれ?でも過去の話したのって俺からだっけ?まぁいっか!


 「その言葉、死んでいった魔族の人達にも言えますか?」


 「だから、僕は未来で何とかします」


 「どうしようと言うのですか?」










 「僕は魔神の所に行って魔王達や魔族の復活を頼みにいこうと思っています」



 



 


 そう、それが俺の魔神を目指す理由だ。





 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る