第466話 《六英雄》全員集合


 「ヒロユ__」


 ユキが名前を言い終わる前にレナノスはユキの首を容赦なく落とし、たまこの首に小刀を当てる。


 「……」


 「……」


 「どうしたの〜……?」


 「どうやら、君は“本物”らしい」


 「流石ね〜」


 レナノスの後ろに倒れているヒロユキ達の死体はボロボロと崩れて土の塊になった。


 「アクエリアスの力と幻覚はカクリコーンか」


 「……どうして気付いたの〜?」


 「あの時、勇者の頬をかすったが血を出さなかった、それにこのドームもおそらく同じ類だろう、俺たちは魔王と戦ってるんだ、その記憶も紋章と共に引き継がれているだろう?」


 「そうね〜……」


 「それで、君は何をしている?」


 「…………」


 「死にたいのか?」


 「私はアナタに会えるこの日をずっと待ってた……」


 「……」


 「アナタの為ならなんだってする……そう思ってたの」


 「……」


 「だけど……いざこの日が来ると私は迷った……」


 「だから、俺に殺されようと?」


 「いや……これは私の賭け、そして私の勝ちよ〜」


 「!?」


 たまこはレナノスを抱きしめる。


 「アナタは私を殺せなかった……」


 「…………たまこ……俺は__」


 レナノスが何か言おうとした時、2人を囲っていた土のドームに日々が入り崩れ出した。


 

 「危ない!」


 

 崩れていくドームの天井が落ちてきたのでレナノスはそのままたまこを【影移動】で影の世界へ一緒に避難させる。



 


 ____ドームが崩壊し、光源バーストもなくなり再び周りに闇が出てきた所でレナノスとたまこは影から出てきた。




 「あーおい?別に社内恋愛は禁止じゃねーけどよぉ……よく解らんドーム作って2人っきりでイチャイチャするなら他でやれ」


 「武神か」


 「トミーさん〜?」


 長槍の柄で自分の肩を叩きながら、出てきたレナノス達をめんどくさそうに見ているのはトミー……彼がドームを壊したのだろう。


 さりげなく2人は離れる。


 「それより、テメーだろ救難信号出したのは」


 「そうよ〜、今しがたレナノスさんに助けてもらったの〜」


 「あぁおい、そりゃー良かった……“俺達は遅かったわけだな”」


 



 トミーがそういうと頭上から静かな冷たい女の声が聞こえてきた。





 「遅かったにしろ、何もなくて良かったです」






 月をバックに輝く人間味の無い白い肌に尻尾。



 「ウジーザス様」


 「…………」


 レナノスはその場でこうべを垂れて、たまこはそのままウジーザスを見つめる。


 「頭をあげてください、それにもう出てきていいのですよ__マーク」


 ウジーザスが言うと森の方から暗闇でも目立つ紳士的な白いスーツにマントとシルクハットの人物がシルクハットのつまみを持ちながら歩いてきた。


 「俺は別にこのまま出なくても良かったんじゃ無いですかね?ボス」


 「フフッ、例えこれが“嘘の救難信号”だとしても帰らずにコッソリ聞くのはどうかと」


 「嘘の救難信号〜?」


 「えぇ、それ以上は何も言わなくていいですよ、私は全て解ってますから」


 「…………」


 「それで、コイツの処分はどうしますか?ボス」


 マークは白い手袋で覆われた指の先に魔法陣を展開してたまこを狙いながら問う。


 「……」


 レナノスはたまこの前に立ち小刀を構えた。


 「おやおや、どういうつもりですか暗殺神レナノスさん」


 「彼女は勇者にたぶらかされているだけだ、正気に戻れば我らの戦力になってくれる」


 「はぁ……」


 マークはため息をつくとウジーザスを見る。


 「今は仲間同士で争ってる暇はありません、マーク」


 「じゃ、話は終わりですね、俺は帰らせてもらいます」


 「いえ、待ちなさいマーク」


 帰ろうとするマークをウジーザスは止める。


 「まだ何か?」


 「えぇ……本当に残念です」


 「?」


 「仲間同士で争ってる暇などないのに……ねぇ……トミーさん」




 「はっ!相変わらず厄介だなぁ【未来視】ってのはおい!」




 トミーはそう言うと足元にあった石をウジーザスに蹴り飛ばした__石は小さなナイフに形を変えて襲いかかるがウジーザスの白い尻尾に跳ね返されて地面に突き刺さる。


 

 「どう言う事だ、武神……その行動は我らを裏切ると捉えていいのだな?」


 レナノスからは殺気は感じない。

 否、感じさせない様にしているのだ……


 「あぁおい?裏切るも何も俺は昔からテメーらと組んだ覚えはねぇ、ただでさえ起きたら新入りの顔しかいねーのにガキどもがいきがってんじゃねーぞおい?」


 「やれやれ……親父からは武神は敵に回すとめんどくさいと言われてたんですけどね」


 状況が読み込めたマークはたまこに向けていた魔法陣を次はトミーに向ける。


 「どうしますか?トミー……あなた1人で私とこの2人が止められるとでも?」


 「あぁ2人?あの獣人はいれねーのかよ?アイツいれても余裕なんだが?」


 「彼女の未来は複雑に絡まっています、確定しない限り当てにしない方がいいでしょう」


 「…………」


 たまこはそう言われても1人で黙って状況を見ているしかできなかった……


 「死ぬ前に教えてください、どうして裏切ったのかを」


 「あぁ?死ぬ前?逆だろ、てめーらの冥土の土産に教えてやるよ」


 トミーは1枚の魔皮紙を取り出して魔力を通す。

 



 「俺達の大将だ」

 

 





 風が吹き荒れ疾風と共に現れたのは










 「疾風参上!」


 綺麗な金髪の髪に揺れる形の整った胸。



 「あー……えと、初めまして」


 綺麗な肌に吸い込まれそうな青い綺麗な目。


 「新しく《六英雄》のメンバーになった、アオイです、よろしくお願いします」






 ____この世の全ての美しさと可愛さを身に宿した彼女の手の甲には六英雄の紋章が光っていた。






 





 

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