第424話 失恋の可能性
《翌朝》
鳥の声もしない早朝。
朝日が差し外は明るくなってきた頃の5時。
{起きろ、アオイ}
「……」
アオイのイヤホンからエスの声が聞こえてモーニングコールをするが、アオイは寝返りをしてお尻を掻いてまだ寝ている。
{まったく……おい、ムラサメ、お前は起きてるだろ、さっさとアオイを起こせ}
「{今は無理ですぞ}」
{どうしてだ}
「{私は今、手と足を縛っていて地面に転がっている状態だからですぞ}」
{……。}
ムラサメはアオイが眠っているベッドの下に転がっていた。
「{勘違いしてもらったら困るですぞが、これは自分で魔皮紙を使ってしたのですぞ}」
{それなら俺が思ってるよりもっと愚かなだな、アオイを守る役割のお前が文字通り手も足も出ない状況を作ってどうする、そんなことも分からないのか}
「{ふっ……今のこの私の状況を見て推測できない方が愚かだと言うものですぞ}」
{なんだと?}
「{我が君の美しさ、可愛さは常軌を逸している、同じ部屋に居る私の気持ちを考えるのですぞ}」
{…………なるほど、確かに俺が悪かった}
「{解れば良いですぞ、と言う事なので我が君の寝顔を拝むことを出来ないのは残念ですぞがここは寝かせとくのですぞ}」
{了解だ、では俺達だけで報告を行う、そちらから伝えてくれ}
「{御意……分かっているのは三つですぞ、まずこの村で出される料理ですぞが、肉には焼いた後にあの液体をかけて食べ、スープにもあの液体を主軸に使っているのですぞ}」
{まさか食べたのか?}
「{いや、こんな事もあろうかと予め魔皮紙を用意しておいたですぞ、これを舌につけて魔力を通せば食べ物は飲み込まれずこの魔皮紙に吸収されるですぞ、本来ならダイエットや味だけを楽しむ事の時に使われるのですぞ}」
{アオイにも渡したか?}
「{もちろんですぞ}」
{解った、二つ目は?}
「{二つ目はこの村では『儀式』というものがあるみたいですぞ}」
{儀式?}
「{そうですぞ、どうやらこの村では恋してる者はその儀式を受けなくてはいけないらしく、今日その儀式を受けることになってるのですぞ}」
エスはその報告を受けて一度頭を整理していると一つの緊急事態があることに気付いた。
それはエスに取ってかなり重要な事である。
{待て…………その儀式を受けるのはお前だよな?}
「{三つ目ですぞが………………}」
「{我が君は誰かに恋してるみたいですぞ}」
その言葉を聞きエスは殺気と魔力を抑えられなくなり周りの空気を震わせる。
それは通信越しでも解るほどの殺気。
{そうか、少し待っていてくれ}
エスは通信を切った。
「……」
部屋は静かだ。
「まったく……エス殿もまだまだお子様ですぞな」
その言葉は昨日、アオイの好きな人がいる事実を知って夜な夜な血が出るほど歯を食いしばり泣いていた奴のセリフでは無かった。
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